言われたことをこなしてるだけで満たされない『夜は短し、恋せよ少年』ネタバレ・感想

夜は短し、恋せよ少年美和　Charles Comics　メディアソフト
あらすじ
受験生の葉月透真は成績優秀で周りからも上位校を狙えると言われている。
だが、本人には行きたい場所が特になく、周りが急かしてくることに辟易していた。
そんな時、透真が学校に忘れた筆記用具を使用したとメモが入っていた。
相手は定時制の生徒。
綺麗な筆跡に惹かれ、相手もそんな人ならいいとメモの返事を書いた。
するとまた返事がやってくる。
何となく相手とのやりとりに気持ちが落ち着く透真だったが、嫌なことがあり誰かにここから連れ出して欲しいと願う。
その相手に選んだのは、誰かわからない定時制のメモの人。
すると相手から待ち合わせ場所を指定され、透真はどんな女性かと期待しつつ待つとそこに現れたのは三十路の男性だった。

定時制に通う三十路の男性と人生に迷う成績優秀な受験生。
メモを通した出会いが二人にとって大切なものへと変わって行く。

この世界から抜け出したい

透真くんは成績優秀だけど、今の生活に不満を感じている。
なぜなら、言われたことをこなすだけだから。
透真くんは小さな頃描いた絵を誉められたことから絵に興味がある。
でも、母親に絵の道に進むことは反対されていて、結局言うことを聞き続けている。
勉強して成果は出るのに、満たされない日々。
そんな時に出逢ったのは自分の席に座っている定時制の男性・楢沢翔梧さん。
透真くんがたまたま忘れて行った筆箱を勝手に借りた楢沢さんはそのことを律儀にお礼のメモを用意する。
そのメモに対し透真くんは丁寧な人だ、と返事を書いたことで交流が始まるわけです。

互いに女性だと思っていた？

楢沢さんの字が綺麗だから、勝手に期待する透真くんと返事があったことで女子高生だと思う楢沢さん。
結果、違っていたわけですが、お互い顔には出さないから…そのまま交流が続きます。
初めて会った相手なのに、急速に仲が良くなる二人。

安心できる、大人

楢沢さんにとって透真くんは勉強を教えてくれる相手だし、透真くんにとっては悩み事を話せる大人。
悩み事なら聞くよ、という大人は他にもいるのに楢沢さんにだけ話すのは恐らく「知らない人」だからだろう、と思いました。
親や教師や塾の講師。
接点がある人に自分の悩みを話せないのは、やはり否定されたくないからかな。
その点、楢沢さんなら否定されても関係が切れるだけだし。
そんな思いがあって彼につい話してしまったのではないか、と思いました。
そしてその楢沢さんが否定から入らず肯定したのも透真くんにとっては心地よかったのだと思います。
そうなると楢沢さんへの依存…というか、信頼が強くなっていくのはわかります。
ここで楢沢さんは大人としてどうやって接するかが非常にポイントだな、と。
子供に対して言いくるめることはできるし、綺麗事も言える。
その立場にあって、楢沢さんは透真くんに対して真摯に向き合うところが良かったです。
肯定してくれる優しくて安心できる大人に対して透真くんが依存し、それを恋愛感情へと結び付けて行く。
それは恋愛感情であれば「強い繋がりができる」というような思考だったかもしれない。
そこをちゃんと諭してくれる大人であって良かった。
また、絵の道に対しての描写もしっかりされているので透真くんがなぜその答えを選んだのかも納得できます。

塾講師はどんな存在だったの？

よく絡んでくる塾講師…。
てっきり悪い人かと思っていましたが、良い講師でした。
関わり方がどうも酷そう、もしくは当て馬そうなのに…。
その辺りを描写することで、透真くん自身「大人はみんなこう」というテンプレートのような思い込みが入っていたことがわかります。
塾講師の描き方でちゃんと透真くんが成長しているんだな、とわかって良かった。

描きおろしはどんな内容？

二人が仲良くしているので良かった。透真くんがちゃんといろいろ見て、そしてその隣には楢沢さんがいる。書店ペーパーも可愛い内容というか、これだから楢沢さんは…！好き！！となるもので良かったです。狡い大人も好きなのですが、年下の可愛い恋人に対しどこまでも甘い対応な大人も大好きなので可愛い二人をたっぷり堪能できました。

高校生と定時制に通う三十路男性。
その字面よりも随分と可愛い恋愛ものでした。
悪い大人がいたいけな少年を…というものではなくて、ちゃんと年下でまだ高校生の相手に対し成長を促すような優しくて安心できる大人。

可愛い話なので、歳の差好きで悪い大人が出てこないものが読みたい方にお勧め。
えっちはさらっとしているので、その辺りを求めると少し物足りないかもしれません。
でも、お話雰囲気上そのさらっと感がとても合っていると思ったので個人的には十分です。

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