むくげの日日是好日

BLコミックの感想日記

パーフェクトヒューマン(自称)な生贄が奮闘する『いけにえもんぜんばらい』ネタバレ・感想


ここまでポジティブな生贄っている?


いけにえもんぜんばらい 加藤スス 秒で分かるBL libre

あらすじ

渦巻家は111年ごとに一族繁栄のため、当主を供物として捧げていた。
そして、この度供物として捧げられるのは渦巻七生。
彼は幼い頃から供物となるべく生きてきた。
だが、捧げるための儀式を行っていると御神体とは別の建物から一人の青年が出てきて生贄は要らないと言われる。
納得がいかない七生はその青年に神様に会いたいと迫る七生。
すると青年が大蛇になり、その姿に七生は驚く。
神様とだけ聞かされ、その神様がどんな姿なのかは教えられていなかった。
それもそのはず、神様である大蛇に捧げられた者は全て食べられていたからだ。
怯える七生を脅し食べられたくないなら帰れと言うも、七生も退くことなく生贄としてやってきているのだから、食べろと言う。
生贄になった七生と神様である大蛇の攻防戦が始まるのであった―…。

 

表紙からして生贄の方が神様(大蛇)に対して良い感情を持っているのがわかって可愛い。

いわゆる神様への供物(生贄)ものですが、この生贄が非常にポジティブなのが良かった。
食べて食べて!という感じでグイグイ迫る。
この生贄ジャンル(?)は大抵理不尽ともいえる設定で神様に捧げられます。

・何かのコミュニティ(村や家など)のために無理矢理
・神様に対して良い感情を持っていない(恐怖、怒り)
・生贄が自暴自棄
・神様が生贄に執着
・神様が生贄に興味なし
・生贄=番(婚姻関係)

というものがよくあるパターンかな、と思うのですが、この作品はとにかく生贄がポジティブ。
家の為、という大義名分はありますがそのために生きてきたので必死(一心不乱な許嫁設定みたい)


作品のポイント


一族繁栄の為の生贄→直系であることが条件。続けると絶えることもあると思うのでそうなったら傍系に移るのかな?
・生贄がポジティブ→それしかないと思いこませているし、自身も家族の為にと思う。
・取り扱説明書あり(生贄マニュアル)→代々伝わっている。また本人作のものもある。床入れ(の知識)も食事作りも完璧
・建物内の生命あるものは大蛇の感情→ツタなどがぐるんぐるんに伸びては七生を囲む。だけど大蛇本人は必死に耐えるし、別に何とも思ってないし、な態度。
・外食代くらいは持っているライフラインにて使用する分など渦巻家が負担?
・長寿の根暗と短命の根明の間に流れるのはナイル川→世界一長い(2021年現在)
・欲望がないと魂はスカスカ→旨味成分。
・人を食べなくても文明の恩恵があれば大丈夫→化学食品を拒否っていた生贄との対比。
・大蛇は実家に1000年戻って無い→いくつなの?
・孕まそうと思えば無機物でも出来るぞ宣言→神様凄い。
・可愛い→それ以上の感想が見つからない。

 

ポジティブ加減がちょっとおかしくコメディ要素がたっぷりで、考えたら何その習わし、と思っても読後感的には「ま、二人が幸せならいいか」となっている。
凄く良いバランス。
理不尽な習わしに関しては実際大蛇も「そんな習わしやめろ」というくらい。
でも、小さな頃からそう躾けられていたし、実際自分が逃げ出したら次の生贄が絶対に捧げられる。
そして、その捧げられるのは自分の妹だとしたら、何が何でも自分を食べてほしいと願う。
それなのにシリアス一辺倒にならず、本当に面白く話が進むのでこれはもうキャラ勝ちであり、加藤先生の上手さだと思いました。

大蛇も七生くんのこと容姿と教養を誉めているところから少なくとも嫌いじゃないタイプだと思う。
七生くんは大蛇の容姿はどうでも良いみたいな感じなところがいいな。
好きになったらもうそこは可愛く見えるというアレです。

他には大蛇のお兄さんの白蛇と使いの蝮が出てきますが、2匹(白蛇は神様だけど)も良いんですよ。
蛇らしく七生くんを食べることを勧めてきますし、なんなら自分が食べるよ!と言います。
大蛇もそうですが白蛇も沢山食べるのでお店でそれはもう、という程食べます。

そして格好も大蛇は格好も人間世界の時代に合わせたもの。
白蛇は大蛇が嫌がる神様の格好。
でも、白蛇も人間のところへ行く時はそこに合わせているのが可愛い。
もし続編があるなら白蛇の話も読みたい。
蝮との関係性も良いけれど、ここはそのままの方がいいかな。


七生くんは今まで生贄として生きてきたので他の人との関わりの必要性を感じなかった。
今回大蛇の為に味の濃い物などを調査するためクラスメイトと話す。
生贄と捧げられたことで「(目的以外の)他の人と関わる事の意味」を知っただけでも大きな変化ですよね。
生贄=死に行く
なんですが、生贄に行き断られて初めて人との関わることを知るって…。
何とも皮肉な展開ですが、このことで欲を知り魂が変わって行く。
生贄精神だけで生きてきたのに、恋を知ったり人と関わりを持ってしまうと欲が出てしまう。
何の疑問も持たずに食べられることのみを当たり前として受け入れていたから「死」に対して何の感情もない。
ただ、言われたことをするのみ。
もちろん、妹を守りたい、母親の笑顔を奪いたくないという感情はありますが。
妹の存在から恐らく父親もいると思うけれど、出てこない。
当主は七生くんだしな…どうなっているんだろう。

魂に欲がないと美味しくない=経験値がない人生はつまらない(本人の意思関係なく)

楽しく生きてこの世を満喫してその上で捧げられる魂が美味しく、意味がある。
食べられるという恐怖、生きたいと渇望するそれこそが魂の味を決める。
人外もので魂食すジャンル(?)は意外と美食家でこういうこと言ってくるんですが、まぁ、大抵食べられないまま終わるんですよね。
魂が美味しくなった時には大抵相手に落ちているという……。

描き下ろしも良かった。
思いが通じ合ったあとは本当に大蛇の変化が可愛い……。
七生くんが少しでも離れようとすると上目遣いとか……。
もう……なんなの……。
可愛いじゃない……。
帯には「うずまきななおの喰べ方」(本編にもあります)が載っているのも可愛かった。
あれポイント高いと思っていたので。
七生くん可愛いな……一族の決まりはアレだけど、純粋培養で育つとこうなるの…?
いや、七生くんだけだろうな。
今までの生贄は違うみたいだし。
そしてカバー下の漫画も可愛いです。

神様は人間の姿の時も蛇顔ですが、大蛇らしくしっかりと蛇の姿も描かれていますが可愛い感じの描かれた方です。
アップになると鱗もしっかりと描写されていますが、可愛い範囲だと思います。
爬虫類が苦手な方にはどんな姿でもダメでしょうけれど…。

タイトルが全部ひらがなで可愛い感じ。
表紙に漢字表記もありますが、ひらがなで良かった。

人外が苦手な方には勧められないですが、平気な方にはお勧めしたい一冊です。
一冊で恋する瞬間から落ちるところまで纏めてられていて、面白い。

恋をすると神様だって変わってしまう、そんなところも可愛い。
可愛いしか書いてないですが、可愛くて面白いならそれ以上の言葉はないですよね。
試し読んでみて蛇が大丈夫そうでしたらぜひ。


       

高校生5人の恋愛模様『STEP WISE STEP』ネタバレ・感想


ずっと友達でいたいわけじゃない、この意味がわかる?



STEP WISE STEP 会川 フゥ BExBOY COMICS Libre

タイトルにも書いていますが、重要なネタバレもしますので苦手な方はご注意下さい。

STEP WISE STEP

あらすじ


喜多見と若林は友達。
これほど気が合う人と友達になれるなんて、自分は幸せだと思う若林。
だけど、学生期間はいつか終わる。

そのことを喜多見に告げられ、終わるなんて考えたくないと言う若林。
すると喜多見はずっと一緒だよね、と笑う。
その言葉に安心した途端喜多見にキスをされて戸惑う若林。

そんな若林に自分は一生友達でいたいと思いたくないと喜多見に言われてしまう。
混乱する友達でいたくないとはどういうことなのかと悩む若林だったが―…。


仲良し5人の話で各人メインとなる話が3作入っています。
表題作の喜多見くんと若林くんの話はひたすら可愛い。
友達でいたくない=付き合いたい
意思表示したのにいまいち伝わって無い展開からのあっさりと落ちるところまで可愛いです。
落ちた先は若林くんは素直に恋愛にのめり込んでいくので悩むところは少なく可愛い恋愛物。
ただ、告白前のキスで舌入れてくるのはなかなかですね。
あと、付き合うとなった後は学校のトイレとかでも盛るのは……。
周りの友人はいたたまれないですよね。
喜多見くんは割と狡猾なのですがそこを若林くんのやんわり性格でスル―するところが可愛い。
もちろん周りは気付いていていますが、心配はすれど忠告はあまりしない…。

sweet (dead) day

あらすじ

姉の夫である聡をいつの間にか好きになっていた要。
隣で眠る聡についキスをしそうになる。
だが、その場面を姉夫婦の家に期間限定で居候している聡の弟・賢次に見つかってしまう。
焦る要だったが、そのことで脅され関係を持つことになってしまう―…。

5人の中では大人びた印象の要くんですが、姉の夫に恋愛感情を抱いていることで脅されるとは。
姉弟と兄弟はともに顔が似ているということは全員顔の好みが似ていることになりますね。

この話……兄の性格が重要で、何事にも動じず全て受けいれて解決してくれる。
なんだか凄い…という設定なのですが、いいのか悪いのか……。
賢次さんいわく兄はモテていたけれど、本人は気付いていない事が多い。
しかも告白してもしっかりと受け止めてその上で気まずくならないようにしてくれる。
でも、本人は鈍くて周りの感情に気付かない。
……兄……。
きっと姉はそんな兄に対しグイグイと行ったのでしょう。
ハッキリと自覚させたんだろうな……。
周りの人は兄が知らない内に勝手に失恋している、という程なので。

そしてここが重要なんですが、この弟も兄に告白済みです。
完全ネタバレなんですが、近親相姦(何もしていないけれど)は絶対にダメという方もいるので…。
一応タグも付けましたが、逆に近親相姦目当てだと違う、となると思うので難しい……。
近親相姦ポイントは告白だけです。

その時の対応も……兄……。

個人的に兄弟云々以前にこの話のパターンが好きです。

この話が一番暗いのですが、ちゃんと未来もあって好き。

36.7℃

あらすじ

板橋には気になるクラスメイトがいた。
その名前は戸越。
戸越に好きな人がいることに気付いたのは偶然。
だけど、一度気付いてしまうと戸越いじらしさに板橋は何とかしたいと思い始めてしまい―…。

何とかしようと画策する板橋くんは可愛いし、戸越くんも相手を見ているだけで良かった。
だけど、やっぱり感情が溢れてしまい告白をする。

不穏な空気が流れた瞬間、それを罰ゲームとして処理するのは板橋。

この「告白を罰ゲームとして処理」というのはなかなか王道の展開なんですが、この後の展開によっては苦手です。
でも、この作品は板橋くんの謝り方が良かった…。
そして、告白された方も彼女と一緒に笑っているのでギスギスしなくて良かった……。

恋愛とは違う2人なんですが、この後もしかして…?と思える展開で良かったです。

描き下ろしは修学旅行でのやりとり。

友人同士の恋話をしてキャッキャしている内容。

……当事者(喜多見くんと若林くん)いるのに、強いな……。
同性同士のやり方を訊くのは板橋くんです。
どうしてと逆に訊き返されますよね。
友達のために知りたいといって納得する若林くん……喜多見くんも大変ですね。
その頃しっかり組の要くんと戸越くんは点呼取りをするも人がいなさすぎて困っている。
戸越くん…。
要くんの付き合っている人を聞き出そうとしているのが可愛かったです。
あの後もちゃんと付き合っているんだな~というのがよくわかる。
賢次さんも要くんに思った以上にはまっていて良かった……。

会川先生の作品に出てくる人の多くが同性と付き合う友人に対して「本人がいいならいい。相手が悪い人でなければいい」という非情に優しい世界なので安心。
その上で彼女持ちも可愛く纏めてくれるのでいい。

可愛い話を読みたいな、という時にお勧めしたい作品です。


       

乗っかったのはそっちだろ?『俺が好きなど嗤わせる』ネタバレ・感想


仕事もそれ以外もビッチとストレートの攻防戦

俺が好きなど嗤わせる 里 つばめ H&C Comics CRAFT SERIES 大洋図書


あらすじ


離婚して半年の梶は同期の神谷と同じ部屋に泊まることになる。
寝ている途中で異変を感じ、目を開ければ何故か神谷が跨っていた。
夢かと口にする梶に神谷は夢だよ告げ萎えさせるなよ言い放つ。
もちろん夢などではなく、どう言うことだと問いかければセフレと切れて欲求不満だったと言う神谷。
神谷が同性愛者だということは知っていたため、もし自分を好きなら付き合うかと提案する神谷だが、断られる。
それから何故か梶が神谷を追いかける展開となり―…。



俺が好きなら跪け』のスピンオフです。
BLアワード2021 第8位の作品です。


一緒のベッドに眠るだけ、眠るだけだから※この言い訳でそれだけで終わった試しなし。
神谷さんの性的指向はオープン※知らないの?と平然で言う。
同期には対して異様なほどのライバル視※銀行漫画ではお約束なのかな。他の企業ものよりも顕著。あとは研究者関係も結構凄いけど、同期とは限らないし。
仕事が出来る人しか出てこない※しかも皆自分に自信あり。
出てくる既婚者像が辛い※何故か幸せうふふな人達がいない。
・嫌な事をする時は信頼できる同期を巻きこむ※上司っぽい。
・好きな人の髪型にしてみた※揺さぶられる(案外チョロい)

スピンオフで上下巻もの。
前作を知らずとも読めます。
もちろん、知っていると「え、神谷さんこんな人だったの…?」と思ったり「加藤くんと松田くんが出ていて楽しい」(『俺が好きなら跪け』のメイン)とより楽しめます。


この作品内での既婚者像

梶さんバツイチ。
神谷さんたちの同期→配偶者が他の人に粉かけてる場面あり。
神谷さんの妹→浮気からの離婚。しかも子供のことにも言及あり。

宮川さん→平和(に見えている)

既婚者問題はありますし、家族問題もあります。
もちろんもやもやするものが残っていることもあります。
でも、全てが綺麗に片付くなんてことはありませんしね。
同期の配偶者問題なんてどうしようもないですしね。
家族問題の方は感情の揺れるところなど丁寧でこういう風に動くことでこちらにも神谷さんの感情が伝わって良かった。
神谷さん、ビッチだからこその発言も多いですからね……。

性的指向はオープンのようですが(知られても平然としている)帯の隠れビッチというワードからお盛んかどうかは秘密、ということみたいですね。
実際読むと神谷さん相手切らしたことない感が凄いですし、モテモテ加減が半端無い。
宮川さん以外全員モテる描写あるので、どんな会社なの…と思う程モテてる人ばかり出てきます。(『俺が好きなら跪け』でもメインの二人モテまくってました)

37歳ですしある程度の経験をしている二人。
その上で快楽優先の遊びで付き合う神谷さんとうっかり乗っかられたことで新たな扉を開いてしまいその先にいたものを掴もうとしたら拒否られる梶さん。
扉をこじ開けられた方(だって睡眠姦……)が追いかける展開。
何故、と問い詰めても軽くあしらわれる。
納得できないと言えばしつこいと言われる。
腑に落ちないんですが、諦めないのって大切ですよね。
こじ開けられた先がよっぽどよかったのか、と思ったのですがその辺りは何も言っていません。
でも一度やったらもう良いだろう的に進められるから良かったのかな。
梶さんは顔が好みなくらいじゃなく案外気になっていたのかな。
その辺りの描写が少し弱い気がしますが(私が読めていないだけかな…)、とにかく梶さんが追いかけるのが可愛かったのでいいです。
色んな人としてきても、結局一人を選ぶことなかった神谷さん。
過去に何かあったのか、もともとそうなのかは不明ですが……好みの体に追いかけられて変化が現れて行くところが好き。
……我慢できず寝てる時に襲うのはナシだけど……。
でも平然と警察呼ぶかみたいなこと言ってる……。
呼ばないと踏んでるだろうけれど。
それなのに、梶さんが言い寄るとつれないんですよ…。
ビッチ設定も存分に活きているので、本当に神谷さん、アレだ、と思うけれど梶さんが追いかけ続けるのでいいです。
経験値があるからこそ踏み出しにくくなる、そんなもだもだが良いです。
ノンケの人が経験積んだ後に引き摺りこまれ、何故かぐいぐいと引っ張る方になる展開が好きです。
そして引き摺りこんだ方(自覚あるなしに関わらず)がおたおたするの大好きです。
自分のしたことで世界が変わってしまったと後悔はするくせに、必死に無かったことにできると思ってうだうだ言うところは様式美です。


里先生は仕事できる人達が好きなんでしょうね。
どの作品見ても全員性格はともかくとにかく仕事が出来る設定。

好きなところは仕事というか、ここぞという時には同期全員「次長」呼びなところです。
普段は呼び捨て。
そこが何ともいえず厭味ったらしい。


俺が好きなら跪け』は表紙が金色ベースだったのですが、この作品は銀色です。
宮川さんは平和そうだし、他に目立つ人はいないので銅色はなしかな…。
またスピンオフの続きが出るかもですが。
短編で描いているようなのでコミックス出ないかな…と期待しています。
今回の作品は帯も良かったです。
裏表紙側の方の面で前作との絡んでいたのですが、こういう小ネタ好きなので嬉しかったです。
里先生がカバー下に主要人物の設定追加してくるの人物像がわかって好きです。

出来る人達しか出てこないため仕事の話が多いですがそこに恋愛をしっかり絡めてあり、感情の機微などが丁寧に描かれています。
神谷さんが基本ツンなのでたまにデレると「お、おおお」となります。
基本ビター風味ですが、前後編でこまごまとした事件も有りつつ程良いところで甘さを投入してくる作品です。 

 

 

 

 

部下の言動で日常に色がつく『オールドファッションカップケーキ』ネタバレ・感想


恋をすると”ただの”日常が違ってくる

 

オールドファッションカップケーキ 左岸 左岸 H&C Comics ihr HertZ Series 大洋図書

あらすじ


39歳の野末は自分で選んでいるはずの日常に少しだけ憂鬱を感じるようになった。
自分が望んで出世もせず、同じような日々を過ごしているはずなのに。
画面に映る流行りもののパンケーキだって気になってもきっと食べにいくことはない。
39歳という年齢がそうさせるのかも、と自身で結論付けていた。
野末は仕事も出来、社内でも人気者。
そして、それは部下である外川も同じだった。
ある日二人が仕事で駅のホームにいる時、野末が楽しげにしている女性たちを羨ましいと言う。
自分は若くないから、あんな風にはできないし仮に若い時でも男性であるからきっとできない。
そんなことを言う野末に外川は「女の子ごっこをしよう」と持ちかけてる。
戸惑う野末をよそに、外川はとりあえず明日はパンケーキを食べに行こうと誘うのだった―…。


BLアワード1位記念、ということで今回はこの作品です。
この作品に関しては「このBLがやばい!2021年度第2位」でもありますね。

5月1日に続編『オールドファッションカップケーキwithカプチーノ』発売

 他には『俺が好きなど嗤わせる』しかなくてアンテナ張ってない感が凄い。
でも、ランキング内に気になる作品があったので購入したいと思います。
丁度アニメイトで対象作品2冊購入すると描き下ろしの小冊子ももらえますしね。


読んだ時に感じた印象としてはコマ数の多さです。
最近だとこれほどコマ数多い漫画見ない気がします。
その分、丁寧な描写でしっかりとそこを見せてくるのが良かったです。

コマ数の話だけでなく、本当に言葉ひとつひとつの選び方、どうして外川くんが野末さんを好きになったのかの描写というか、言葉に重みを感じる。
自分よりも長く生きている人からの経験値からくる言葉。
説得力が増しますからね。
理想ではなく、自分が実際に感じたことを語る方が響きやすい。
そして、実行力があるから嘘というか誇大して言っていたわけでもない。
そんなの見せられたら好きになる……。
しかも、野末さんめちゃくちゃモテるんですよね。
そこの点からも慕われている感がもの凄く出ていますし、接する人にもわりと公平なのだろう、と推測できます。
恐らく同期の上司からはせっつかれてものらりくらりと交わし昇進したくないと言う。
そんな野末さんをもどかしく思う外川くん。
仕事が出来ることを皆わかっていて、しかも昇進の機会も十分あるのに自らその機会を捨てる野末さん。

現状がいい。
現状で、いい。

仕事だけでなく毎日も変わり映えせずなんとなくこなしていて、少しだけ憂鬱を感じている。
それは自分で選んでいるにも関わらずそう思っている。

どこかで変わりたいということを考えていても、今更、と自ら捨てている。
年齢がそうされるのかもしれない。
40歳に手が届くから、そう諦めている節がある。
何かを見てキラキラするものを眩しいと見つめるだけで「でも」と諦める。

そんな彼の元にやってきたキラキラを手に取って彼に渡す外川くん。
野末さんが気になったもの、気になるだろうものを集めてくる。
その集められたものを手にして野末さんの日常は少しずつ色が出てくる。
憂鬱だった日常が、欲しいと思っていても何かと理由をつけて諦めていたものによって変わって行く。
それを渡すのは、自分に懐く部下である外川君。

とにかく外川くんが必死なんですよね。
その必死さの理由を何となく勘付いているのにわざと、違うと思いこむ野末さん。
10歳という年齢差、同性、上司と部下。
理由なんて探せばどれだけだってありますし、逆にいうとそのくらいの理由とも言える。
けれど、その「理由」が野末さんにとってどれほど重要なのか。
今までの生活を変えてしまうと思うから、慎重にならざるを得ない。

問題点を丁寧に描いて心情が動くそこを繊細に描かれているところがいいと思いました。
大きな事件などは無く、ただ、日常を丁寧に描くことで問題を浮き彫りにしていく。
出てくる人達も皆嫌な感じがしないのも良かったです。
上司が合コンをセッティングして参加を促すのはセクハラ、パワハラ案件になりそうですが、本人たちが割り切っているのでいいです。

本当に出てくる人全員野末さんを好きなのが凄かったくらいです。
どれだけ良い人なの、野末さん。

あと、カバー下の漫画の話になるのですが、野末さんのセリフにハッとしました。
確かにどれだけ苦手なもので、それが害虫と呼ばれるものであっても自分の為に「殺生」をしてくれる。
この感覚ですよ。
そうだな……と今更ながら「殺生」をしてくれるって凄いな……。
いや、まぁ、そのまま放置するという選択も難しいのですが……。
殺生、か。
このセリフの後は甘い展開なので、重い話ではないです。
ただただいちゃいちゃしているのですが、セリフのインパクトに全部持って行かれてしまいました。
本編にも素敵な所は沢山ありましたが、その中でもこのカバー下のやりとりインパクトの大きさ。
ここだけが異質に見えるというか、野末さんのこういうところが魅力なのかもしれない。

本編が丁寧に描かれているところ、そして穏やかな日常。
その中に上司と部下という関係性と年齢差があり同性である中での恋愛。
綺麗に纏めてあって良い作品だなと思います。

大きな事件が起きるわけでもなく、ただ淡々とした日常の中にほんの少しの色を差す。
ただ、それだけなんですが、本当に丁寧な描写で描かれています。
だからこそ二人の事が想像しやすく身近に感じやすいのかもしれないです。

恋愛の醍醐味は、必ずしも激しい事件なんかなくても日常に転がっている。
そんな恋愛話です。



       

酔っぱらってお持ち帰りをしたその後は?『恋だ愛だはさておいて』ネタバレ・感想

酔っぱらいから始まる恋愛

恋だ愛だはさておいて アマミヤ fleur comics MEDIA FACTORY

あらすじ


酔っぱらってふらつきながら歩く岡崎太一はベンチで横になっている藤仁成に突然スーツを掴まれる。
酔っぱらいか、と相手にしない太一だったが尿意を訴える藤を仕方なく自宅に連れ帰る。
太一が管を巻きながら藤に文句を言えばお礼に抜いてあげると言われその先の記憶がないまま翌を迎える。
ベッドの上で二人とも裸という状況に太一は焦るも藤は気にしていないような素振り。
なかったことにしようとする太一だったが、藤を車で送る途中何故かフェラされてしまいどうにもならない状態に陥る。
だが、そんな太一をよそにやはり藤は平然としながら「都合のいいオナホ」だと思って連絡してね、と笑うのだった―…。


まずタイトルが可愛い。
「さておいて」のところが凄く好き。

表紙もピンクで可愛くて読み進めると「都合のいいオナホ」というパワーワード


定番のお持ち帰り※トイレ行きたいと喚いているだけなら放っておくこともできたのでは?
藤くんの技術※あっさり陥落する太一くん
オッパイ星人の太一くん※目視でサイズ分かります。凄い。
男はなし、と思うくせに顔が可愛いとすでに落ちている感満載の太一くん※藤くんは可愛い
二人とも少しだけひねくれている※可愛い範囲
・太一くんも藤くんも過去の恋愛遍歴によってちょっと諦めモード※諦めない。
二人とも互いの顔が好み※可愛い。
女性と二人で抜けておいて身体だけの関係を持ちかける太一くん※お、おぉ……正直ですね、と片付けておくか迷う案件。


男はなしでも顔可愛いと言う時点でもう決まったも同然ですね。
しかも、藤くん技術が凄い。
太一くん史上で最高点を叩きだすので、これはもう決まったも同然ですよね。

太一くんは帯にて「割とダメ男」とあるのですが、今までの彼女に対する態度…。
また、藤くんは「ビッチ」とあるので太一くんによくちょっかいをかけます。

持ち帰る女性の扱いについてはちょっとアレなところが見えますが、太一くんも藤くんもひねている描写として……まぁ、大丈夫な範囲です。
最初に身体だけ、と持ちかけただけマシだと思ってます。
行為はしたいけれど、続ける気はない。
わざわざ言う必要はない。
ないけれど、もし相手が勘違いしてしまったら。
一晩だけだと思っているのは自分だけで、相手の気持ちを読み間違えていたら。
太一くん自身、過去の恋愛を思い出して相手に伝えるのですが、ここが個人的には重要ポイントなので良かった。
これが黙ったままや思わせぶりな態度で騙す案件だと男女どちらであっても「え、ええぇ……」と考えてしまうほどにハッピーエンドが好きなので……。

※時々「好きだから仕方なく」とか「好きな人の気をひくためにわざと騙したんだ」という展開がありますが、騙された方が幸せにならないと気になる……これは性分なのでどうしようもない……。
主人公たちだけが幸せうふふ、だともやってしまう……。
特に若気の至りでない場合は余計に。

藤くんが割とビッチというか男性遍歴もしっかり見せつつなのですが、太一くんの何気ない言動にキュンとしているのが可愛い。
過去の恋愛での苦い想い出が素敵な人によって苦さを少しずつ感じなくなっていくのが好きなんです。
太一くんと会えて良かったね…。
ちなみに騙す騙さない問題なら、藤くんが太一くんにも仕掛けているのですが、ここはちゃんとハッピーエンドなので……。※騙すというよりも誤魔化しからの駆け引き。


描き下ろしは出会った時の真相と可愛い二人のその後の二本立てです。

藤くんをけなげだなぁと思う太一くんと甘える藤くんが可愛いんですよ!
付き合った後のイチャイチャってどうしてこんなに可愛いんだろう……。
藤くんが可愛すぎるからなのかな……。
互いを大切に想っていることがわかるので良かった。

何故かこの作品春っぽいな、と思っていたのですがピンクの表紙+発売が4月だったからそのイメージかもしれないです。

そして可愛いタイトルなんですが、しっかりと「さておいて」に繋がる内容となってます。
この作品が作家デビューコミックスなのですが、他の作品も良かったです。
可愛い恋愛話でサクっと読めるのでお勧めです。

 
       

血の繋がりがない弟への恋慕『きみは僕の嘘』ネタバレ・感想


隠した想いを嘘と名付けた兄の視線の先

きみは僕の嘘 四宮 和 H&C Comics ihr HertZ Series 大洋図書

あらすじ

写真家の父をもつ瀬名光基。
光基もまた、父の姿を見て大学で写真を続けていた。
写真家の父は自由に被写体を求め再婚後一年も経たずに光基置いて出て行く。
再婚先に残された光基だったが、家族として上手くやっていた。
中でも義弟の侑季は光基のことを「にぃ」と呼び懐いていた。
時には光基の布団にもぐりこんでくるほど。
だが、その義弟の無邪気な様子に光基は何ともいえない気持ちを抱えており―…。


コミックスにもはっきりと義理とありますので「血が繋がっているのかどうかとハラハラすることのない兄弟もの」です。

・お父さんが自由すぎる※義母はその自由さも愛しているので大丈夫だと言いつつも子供的には?な案件。
・家族全員光基に優しい※ギスギス苦手な人も安心。
・光基はわりと下半身事情は落ち着いていない※続いている人は1人で今までも何人かいたことを匂わせあり。
・義母と義姉が全てわかっているよオーラ全開※ヒリヒリが苦手な人も安心。
・父親は最後まで自由が過ぎる※げ、芸術家だから……。


兄弟ものは好きだけど、血が繋がっているのは嫌。
兄弟ものは好きだけど、血は繋がって無いと嫌。だけど、共異存が強いなら考えないでもない。

そういう方にお勧めしやすい内容となっています。

小さな頃から血の繋がりはないと認識し、父親は出ていっている(置いていったともいえる。光基はそう思っている)という状態での兄弟もの。
兄は当然のように「家族を壊したくない、自分の感情よりも居場所が大事」と考えています。
……これはこうなるよね、と思います。
義母と義姉はおおらかな人達で光基に自由でいてほしいと思っている。
また、大学の教授も同じようなことを言い続けることから光基がしっかりと周りとの関係を重要視しているかがわかります。

父親に関しては「芸術家だから」という免罪符がこれほどまで効力を得ているかと…。※世界的に有名な写真家
もちろん情熱は大切だけれど、小さな子供を置いていくのか。
託す先は再婚した女性。
プライベートな話なので当人同士が良ければ良いのですが。
当人には本来子供も含まれるはずだけど……。
こうなってしまうと光基が感情を抑制するのは仕方ないな、と。
ま、その抑制理由の大半は義弟のことが好きだからでもあるんですけれど。

あと、光基は義弟への感情を抑えてはいますが下半身はそうはいかないわけですよ。
お約束のその場面を義弟に知られてしまいますし、義弟自身も独占欲に気付き始めるわけです。

元々お兄ちゃん大好き!お兄ちゃん好きだからお布団一緒に入って寝たい!※高校3年生
ですからね。
お兄ちゃん見つけてやったー!となったのに色気ダダ漏れ状態でセフレ(ちゃんと友人関係でもある)とイチャイチャしていたらブチ切れますよね。
でも、お兄ちゃんは分かっていないのが……何故なの……。
何故両片想いの面々は常に相手の感情だけは察することができないの……。
他の人に対しては超人的な察知能力発揮するくせに……。

また、父親に関しては色々思う物の、職業についてはやっぱり切り離せず光基自身も写真で受賞していたり大学の研究室に残る事を勧められたりと大きな影響を受けている。
これも父親譲りの才能で片付けられるのかなぁ、と少し思ったりもしましたが……。※言う方には悪気はない。
確かに小さな頃からカメラというものがあり父の写真を山ほど見ていただろうから全く関係ないとは言わないけれど。
あと、教授が父親の学生時代と比べていることから恐らく同じ学校だと思います。
教授視点でみればクセなども気付いてそういうことも含めて「父親譲り」なのかもしれない。

描き下ろしは3年後の二人です。
大学生になったのに子供扱いしないでというアレです。
可愛いです。

セックスシーンは所謂朝チュン程度ですのでガッツリしたのが見たい方だと少し残念に思うかもしれません。
四宮先生はどちらかというとどの作品もお色気シーンが少なめの印象。※現在までに3作品読んでの感想です。

タイトルに「嘘」が入っていたので4月1日の紹介作品に選びました。
ただ、嘘らしい嘘というよりは抑制の方がメインに感じました。
その抑制からの解放がテーマなので光基良かったねと思いました。

父親に関しては引っかかるかもですが、義母、義姉ともにBLあるあるの理解ある人々なのでギリギリせず読めると思います。



       

備忘録

4月は新刊の購入予定なしなので5月で判明している分と気になる連載を記録しておきます。
※よく忘れるため。

5月1日
黒か白か 6巻』さちも
アニメイトが薄い本フェアと称して過去の分も今からでも間に合いますよ商法です。

『黒か白か6巻』過去の薄い本も手に入りますよフェア!

※リンク先は通常版です。
このフェア、過去に手に入らないものをもう一度手に入れられるチャンスなので後追いの人は嬉しいと思います。
薄い本セットでなくともアニメイト特典として描き下ろし漫画リーフレットがあるようです。
早い者勝ちなのはいつものことなので、気になる方は予約した方が良いと思います。

その他
・エメラルド応援店には描き下ろし1P漫画カード。
・コミックシーモアは描き下ろし漫画。
・Renta!はロゴなしカバーイラスト。
Amazonスマホ壁紙デーた配信(期間限定)

本当に特典が多ければ多い程購入する場所迷いますよね。

この作品もここまで続くとは思いませんでした。
先生描くの早いのでしょうね。
サクサク新作出るので嬉しいです。

オールドファッションカップケーキ withカプチーノ』左岸左岸
前作『オールドファッションカップケーキ』が綺麗にまとまっていると思っていたのでどうしようか迷い中。

5月7日
カーストヘヴン 7巻』緒川千世
同日に『緒川千世ファンブック―flow―』も発売予定。
記録はしておきますが、最終回を迎えるまで購入するかわからないです。
3巻まで購入済みで、巽と仙崎が好きです。
先生曰くこの二人は高校生活を終えないと(つまりカーストゲームの無い世界)に出てからじゃないと描けないとのことだったので。
あの世界観は結構キツいのですが、巽と仙崎くらいとんでもない設定まで行くと好きな二人になるというなんとも難しい線引きの世界。
緒川先生は好みが分かれそうな世界を描くことが多く、地雷持ちなので踏まない作品はどれか、とチェックしないと…。
近親相姦ネタ多くて喜んだのも束の間、気付くと「え?え?」となったり気持ちを抉られたりと大変。
逆を言えば、それだけ心理描写がある、ということなので沼は深い。

5月25日
25時、赤坂で 3巻』 夏野寛子
特装版もあるようです。
小冊子付くようです。
購入はしますが通常版と迷い中。
アニメイト限定の8P小冊子付きもあるので通常版と合わせると今のところ3種類は確実。
すでにお気に入りの数がそれなりにあるので予約必要かな。
更に各書店特典もつくと思うと好きな方は本当大変…。嬉しいけれど、大変。
そして先生も忙しくなりますね。

特装版+アニメイト8p小冊子のページです

5月27日
親しき仲にも礼儀アリ 前・後内田カヲル
作家買い。前作(『星をかぞえること』)に続き2冊同時発売。


連載中
恋が満ちたら』上田アキ
恋が落ちたら』の続編。好きなので嬉しい。

悪人の躾け方』ダヨオ
ロンリープレイグラウンド』のスピンオフ、楽しみ。
自信満々な人が更に何も示していないくせに妙に自信のある人に絆されるのが好きです。
基本、性格はどちらもアレな人が多い。
フィクションと割り切れるところがいい。

Revenge~ヤキモチ妬いたらダメですか~』松本羊
試し読みして絵が好み。
タイトル通りの展開かな?
地雷がないといいな…。

スキャンダラス・ダーリン』いつきまこと
試し読みで面白い。
このままベタなのかな?
スパダリで恋愛でヘタれそうな感じ…。

終了したけれどコミックになっていない
call』朝田ねむい
朝田先生の絵が好きなんですよ。

他にも思い出したらここに追加していきたいです。