むくげの日日是好日

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ひとりでできるからといって辛くないわけではない『よきヒモとよき飼い主』感想・ネタバレ


賃金を稼ぐだけが「仕事」じゃない、よきヒモとは

よきヒモとよき飼い主 未散 ソノオ JUNET COMICS ピアスSERIES JUNET

 


あらすじ

美容師学校に通うも実技の段階で自分の不器用さに失望し学校を辞めてしまった安田愛論(やすだ めろん)。
しばらくは仲間と楽しく過ごしていたが、お金が底を尽きてしまう。
親に連絡しようとするも次にやりたいこともないため連絡しづらいと途方に暮れていた。
座り込み項垂れる愛論に声をかけてきた男性がいた。
彼の名は河合主水(かわい もんど)。
愛論が腰かけているのは主水が済むマンションの前だった。
目的が不明なため通報するぞ、という主水を見上げる愛論。
愛論の目には主水が酷く疲れているように見えた。
お金がないことを話している内に何故か主水の家に連れ込まれ、そのままセックスをしてしまう。
愛論はこのまま行くあてもないし、主水のヒモになろうかな、と言いだしそのまま二人は一緒に住む事になるのだが―…。


読んだ時も「え?」と思ったのですが、あらすじ書いてもやっぱり「え?!」となりますね。
未散先生の作品はかなりキャラが独特だと思うのですが、今回の作品もそう。

美容学校関連のお金(入学金、学費)全て使いこむ。※必要分もあるのは承知。
初めて会った人にヒモを申し込む。※これはどちらにも「え?」案件。
意外と重い親の借金問題※最後まで気になって仕方ない。あとがきで解説あり。
借金返す方法は粉物。そうだ!タコ焼きだ!!※億返した人いるしね!という発想。
愛論の周りには良い人がたくさん※未散先生の作品は割と平和なのがいい。
タイトル通りの内容※素晴らしい。

最初の2点はまぁ、とっかかりですよね。
ヒモ申し込み案件に関してはTLでもよくある話ですよね。
ただハッキリと「ヒモになる!」と少なそうですが。

→このヒモ発言に関してはアニメイトの特典ペーパーにて愛論がヒモが何たるかを理解していないことが判明。
「そっかぁ、だから言っちゃったんだぁ♡」というよりは「それは本編で知らせてほしい……」と思うくらいの重要な発言だと思うのだけど、違うのかな……。

親の借金問題はこの主水という性格を現しているようでもあるし、あとがきでも未散先生の

「ひとりで何でもできる人は全部背負いがちだけど皆でわけっこするといいよ、頼ろう」(※要約)がまさにそうだな!という展開でした。

主水は何でもできる。
でも、だからと言って疲れないわけではないし、負担を感じないわけでもない。
だけど、できるからと無理をしがちです。
そんな時に愛論のような存在がいることでかなり気持ちが楽になる。
何でもできるけど、だからといって「無理にやる」はまた別ですしね。
そこが大事なんですよね。
実際、主水は借金について悩むことで仕事のパフォーマンスが落ちてしまいその仕事を続けられないかも、と不安になる。
負のループですよ。
しかも、「好きでしていたはずの仕事」が「借金を返す為の手段」になっていることに愕然とするわけです。
つらい。

良かったなぁ、愛論がいて。
セックスしたその翌日に「ヒモになる!」とか言ってきたけど、しっかりしたヒモなんですよ。
主水の借金を一緒に返すとか言い出して「そのための資金頂戴!」と何度もお金を無心(※愛論には悪気はない)するけど、本人はいたって真面目なんですよね。
愛論以外は「お金持って逃げるか相手は手切れ金だと思っているのでは…」と思っているところ含めてよいヒモなんですよ。
そもそも働いたらヒモじゃないんじゃないか、と突っ込まれていましたが。
でも、愛論は家の掃除しているしね(気が向いた時だけですが)

あとは、この借金問題。
精神的な面ではしっかりとフォロー入ったけれど、結局どうなったのか…。
答えはあとがきにありますが、本誌連載を読んでいるだけだったらもやってしまいそう……。
往年の王道!何かあって急にお金がドバドバ入ってきたよ☆という話もなかったので…。
あとがき読んでああ、そうだよねぇ、現実的だねぇ。
そう思いましたよ。
答え:どうにもならないので地道に返す


この作品一話目が読み切りタイプで人気が出ての連載かな?と思ったのですが掲載月見ると連続して掲載されている…。
不思議…。
読み切り『ヒモと飼い主』の次の月から『よきヒモとよき飼い主』の連載なのですが、スパンなくとも『よきヒモと~』に説明が入るという…。
そして連載ではヒモ生活一年目ということが判明。
あの出会いでしっかりとヒモ生活続けていたんだ…と思うと同時にそれはもう「愛」なのでは…?
と思ったのですが、実は互いにそう思っていないのも…。

最終的に付き合うので当然ヒモではなくなり「彼氏なら家賃払う!」というしっかりしたところも良かったです。
愛論、凄く嬉しそうに払うんですよね。
壊滅的に不器用だったけれど、周りの人達に助けられつつちゃんと成長していく。
そこを主水がしっかりと誉めたり指摘するのも良い。
そりゃ愛論の周りの人も泣いちゃうよ……。
そしてこの経験から愛論の周りの人も生活が変わっていくのもいいな。

スピンオフ展開きてくれても嬉しいけれど、気になった二人がカバー下で「※身内同然の特別な友達」と説明ありでしたよ。
でも、これ愛論の説明だし、その先には何かあるかもしれないので期待しよう。
あと周りの人達もかなり設定あるようなので期待できるのでは?
気になった二人の内片方が有名一般人インスタグラマーとどうこうなっても楽しそう。

未散先生の中ではかなりえっちシーン多めでした。
あとがきでも「すけべ足りてるかどうか確認した」とありましたしね。
掲載誌がピアスだから……気になるところですよね。

未散先生の絵は個性的なので読まれない方もいるかもしれません。
でも、話が本当に良くて好きなのでお勧めです。