どんな縁であれ出会ったら放っておけないよ『それじゃあこれから何をする？』ネタバレ・感想

それじゃあこれから何をする？　木山　はる　BE✖BOY COMICS DELUXE　libre
※重要なネタバレ要素含みます。知りたくない方はご覧にならないでください。

あらすじ
離婚をした途端、モテまくる大津。
この事態に辟易し、友人・吉野に相談するとゲイ専門アプリを紹介される。
素直に登録した大津はアキと名乗る青年と会う。
一晩過ごしたい、というアキに対し、大津はアキと話せば話すほど放っておけなくなり
これからも会おうと提案するが―…。

大津さんは女性がグイグイ来て辟易→吉田さんに相談→じゃぁ、男だな→ゲイ専門アプリ（え？）
アキくんは好きな人がいるけど、結婚しちゃう→でも自分は一人で寂しい→一晩付き合って欲しい→ゲイ専門アプリ

この温度差…。
本当に、大津さんのグイグイが重要なんですよね。
とにかく大津さんのコミュ力が凄いので、これはちょっと引く人もいそう…と思ってしまいました。
対応は丁寧だし、言わんとする事もよくわかる。
だけど、距離の詰め方がエグ過ぎてどうしたらいいのか戸惑う人もいそう…。
実際、アキくんも戸惑っていましたしね。

大津さんは離婚した途端狙われるというくらいなので、相当評価高いのだろうな。
何せ、取引先の人までグイグイ迫ってくるって…だ、大丈夫？と不安になりますよ。

そして高校時代からの友人の吉田さんも結構な人だけど、これスピンオフ来るかな？

悩んでいるなら今までしたことないことだ！
女性に迫られるのが嫌だ？
ならゲイ専用出会い系だ！

え、えぇぇ？
そんな理由通るの…と思いましたが、通るんですね。
大津さん、本当に何と言うか…好奇心は猫をも…の典型じゃ……。
アプリで会ったアキくんを放っておけないから、よし、これからも会おう！
えぇえええぇ？
一回会ったら終わり系じゃないの…と焦るアキくんと対象的。
あと、これほど懐が深いとアキくん以外にも何かあったんじゃ…と不安になりますが、そこは平等というのは誰にも興味がないのと同じというアレに繋がるわけですよ。

皆に優しいのは美点だけれど、特別感がない。
そう、愛されている感がない。
お別れしましょう、そうしましょう。

というアレですよ。

離婚の原因（妻の浮気）もそうだけれど、大津さんは自分が原因作ったとか言ってしまうしね。
その点を友人の吉田さんは指摘しています。
どんな理由であれ、浮気した方を擁護する気は無い。
まぁ、これはその立ち位置によって揉めそうな案件ですけど。
だから大津さんは自分に原因があるとか言う訳ですし。
……大津さんタイプなら話せば良いのに、と思いますが大津さんタイプだからこそ見限ったとも。

吉田さんは大津さんのことをよく見ていますし、高校の頃からの評価などいろいろありますからね。
スピンオフ、こないかな…。

大津さんは大津さんでやっぱりちょっとアレなんですよ。

一晩だけのお付き合い？
え？
出会い系アプリってそんな感じなの？

そんな対応しているくせにアキくんに対して可愛いなぁ、という延長線で頬にキスするとか…。
なんなの？
……ねぇ、なんなの？
と尋ねたくなる行為満載の大津さん。
コミュ力が高いとかで纏めていいのかどうか…。

お話ししたいだけで登録とか…本気で探している人からしたら面倒ですよね。
大津さんはヒキが強くて、アキくんは弱い。
けど、結果的には良いのでアキくんもハッピーで良かった。

以下重要なネタバレ。

アキくんの好きな人は血の繋がった兄です。
重要なところなので隠す方が良いのだろうな、と思いつつも「近親相姦」に関しては絶対に嫌という方も一定数いますので書いています。
逆にそこを求めると肩透かしなので、あくまで要素として入っている、くらいだと思って下さい。
比べられて親に恐怖を抱き、その恐怖から救ってくれる憧れの対象である近親者に恋愛感情を抱く。
親としても悪気なく比べている場合があるので誰をどうしたらいいのか困る内容なんですよね。
何気ない言葉でトラウマを植え付けてしまうことは多々ありますからね。
……出来の良いきょうだいものあるあるですね。

そのことを聞いても大津さんはちゃんと受け止めて、しかもそのハードルを飛ぶように促す。
仮に飛べなくてもいい、挑戦しなかった時に後悔することだけは避けて欲しいと思うと背中を押す。
年上で放っておけない体質だからこそグイグイさ。
このままじゃいけないことなんて、アキくんもわかってる。
わかってる、けど。
そう、この「けど」を後ろから押す人がアキくんには必要だった。
要らない、そう思っていたし構わないでって思ってる。
だけど、どこかでそのきっかけは必要だってわかってる。
ここが丁寧に描かれているところが良いんですよね。
大津さんのグイグイさが重要ということもわかりますし。

越えたからといって急に何かが変わるわけではないけれど、一つ越えられれば自分を肯定できる。
それはあると思うので、そこが良かった。
そして、その傍には背中を押してくれる人がいる。
すこし構い過ぎだけど、それでも大切な人がいる。

アニメイトで購入したので特典ペーパーがありました。
ちょっとした話の中でもアキくんを心配する大津さん。
過保護…というか、なんだろう、大切にしたい、健やかでいてほしいという感情が強すぎるためかセ○ムみたいになってる気がするんですよ…。
※セ○ムは悪くないです。しっかり見守ってくれて素晴らしいです。
大津さん、出来すぎるからこその、気になる点かもしれない……。
アキくんが愛されているのは分かるけれど、やりすぎるとウザいとか言われそう……。
勝手に心配してしまいましたよ。

表紙とタイトルを見て気になり、今までどんな作品描いてらっしゃるのかな、と思ったらデビュー作だったんですね。
新人の方も皆さん上手いですね。

ちょっと大津さんがグイグイきますので、そこが気になる方はいるかもしれません。
でも、だからこそアキくんと仲良くなれたんだし、へこたれずめげない大津さんだからこそ、アキくんを呪縛から解き放つことができた。

ちゃんと二人の関係が進む様子が丁寧に描かれていて読後感も良いです。
ただし、えっちはサラリといいますか、触り合いっこくらいです。
両想いかーらーのーが見たかったなぁ、とも思いますが感情に重きを置いている作品だと思うので、これはこれで。
えろえろが読みたいー！
そんな時よりはじんわりした話が読みたい、そんな時にお勧めの作品です。