むくげの日日是好日

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乗っかったのはそっちだろ?『俺が好きなど嗤わせる』ネタバレ・感想


仕事もそれ以外もビッチとストレートの攻防戦

俺が好きなど嗤わせる 里 つばめ H&C Comics CRAFT SERIES 大洋図書

 


あらすじ


離婚して半年の梶は同期の神谷と同じ部屋に泊まることになる。
寝ている途中で異変を感じ、目を開ければ何故か神谷が跨っていた。
夢かと口にする梶に神谷は夢だよ告げ萎えさせるなよ言い放つ。
もちろん夢などではなく、どう言うことだと問いかければセフレと切れて欲求不満だったと言う神谷。
神谷が同性愛者だということは知っていたため、もし自分を好きなら付き合うかと提案する神谷だが、断られる。
それから何故か梶が神谷を追いかける展開となり―…。



俺が好きなら跪け』のスピンオフです。
BLアワード2021 第8位の作品です。


一緒のベッドに眠るだけ、眠るだけだから※この言い訳でそれだけで終わった試しなし。
神谷さんの性的指向はオープン※知らないの?と平然で言う。
同期には対して異様なほどのライバル視※銀行漫画ではお約束なのかな。他の企業ものよりも顕著。あとは研究者関係も結構凄いけど、同期とは限らないし。
仕事が出来る人しか出てこない※しかも皆自分に自信あり。
出てくる既婚者像が辛い※何故か幸せうふふな人達がいない。
・嫌な事をする時は信頼できる同期を巻きこむ※上司っぽい。
・好きな人の髪型にしてみた※揺さぶられる(案外チョロい)

スピンオフで上下巻もの。
前作を知らずとも読めます。
もちろん、知っていると「え、神谷さんこんな人だったの…?」と思ったり「加藤くんと松田くんが出ていて楽しい」(『俺が好きなら跪け』のメイン)とより楽しめます。


この作品内での既婚者像

梶さんバツイチ。
神谷さんたちの同期→配偶者が他の人に粉かけてる場面あり。
神谷さんの妹→浮気からの離婚。しかも子供のことにも言及あり。

宮川さん→平和(に見えている)

既婚者問題はありますし、家族問題もあります。
もちろんもやもやするものが残っていることもあります。
でも、全てが綺麗に片付くなんてことはありませんしね。
同期の配偶者問題なんてどうしようもないですしね。
家族問題の方は感情の揺れるところなど丁寧でこういう風に動くことでこちらにも神谷さんの感情が伝わって良かった。
神谷さん、ビッチだからこその発言も多いですからね……。

性的指向はオープンのようですが(知られても平然としている)帯の隠れビッチというワードからお盛んかどうかは秘密、ということみたいですね。
実際読むと神谷さん相手切らしたことない感が凄いですし、モテモテ加減が半端無い。
宮川さん以外全員モテる描写あるので、どんな会社なの…と思う程モテてる人ばかり出てきます。(『俺が好きなら跪け』でもメインの二人モテまくってました)

37歳ですしある程度の経験をしている二人。
その上で快楽優先の遊びで付き合う神谷さんとうっかり乗っかられたことで新たな扉を開いてしまいその先にいたものを掴もうとしたら拒否られる梶さん。
扉をこじ開けられた方(だって睡眠姦……)が追いかける展開。
何故、と問い詰めても軽くあしらわれる。
納得できないと言えばしつこいと言われる。
腑に落ちないんですが、諦めないのって大切ですよね。
こじ開けられた先がよっぽどよかったのか、と思ったのですがその辺りは何も言っていません。
でも一度やったらもう良いだろう的に進められるから良かったのかな。
梶さんは顔が好みなくらいじゃなく案外気になっていたのかな。
その辺りの描写が少し弱い気がしますが(私が読めていないだけかな…)、とにかく梶さんが追いかけるのが可愛かったのでいいです。
色んな人としてきても、結局一人を選ぶことなかった神谷さん。
過去に何かあったのか、もともとそうなのかは不明ですが……好みの体に追いかけられて変化が現れて行くところが好き。
……我慢できず寝てる時に襲うのはナシだけど……。
でも平然と警察呼ぶかみたいなこと言ってる……。
呼ばないと踏んでるだろうけれど。
それなのに、梶さんが言い寄るとつれないんですよ…。
ビッチ設定も存分に活きているので、本当に神谷さん、アレだ、と思うけれど梶さんが追いかけ続けるのでいいです。
経験値があるからこそ踏み出しにくくなる、そんなもだもだが良いです。
ノンケの人が経験積んだ後に引き摺りこまれ、何故かぐいぐいと引っ張る方になる展開が好きです。
そして引き摺りこんだ方(自覚あるなしに関わらず)がおたおたするの大好きです。
自分のしたことで世界が変わってしまったと後悔はするくせに、必死に無かったことにできると思ってうだうだ言うところは様式美です。


里先生は仕事できる人達が好きなんでしょうね。
どの作品見ても全員性格はともかくとにかく仕事が出来る設定。

好きなところは仕事というか、ここぞという時には同期全員「次長」呼びなところです。
普段は呼び捨て。
そこが何ともいえず厭味ったらしい。


俺が好きなら跪け』は表紙が金色ベースだったのですが、この作品は銀色です。
宮川さんは平和そうだし、他に目立つ人はいないので銅色はなしかな…。
またスピンオフの続きが出るかもですが。
短編で描いているようなのでコミックス出ないかな…と期待しています。
今回の作品は帯も良かったです。
裏表紙側の方の面で前作との絡んでいたのですが、こういう小ネタ好きなので嬉しかったです。
里先生がカバー下に主要人物の設定追加してくるの人物像がわかって好きです。

出来る人達しか出てこないため仕事の話が多いですがそこに恋愛をしっかり絡めてあり、感情の機微などが丁寧に描かれています。
神谷さんが基本ツンなのでたまにデレると「お、おおお」となります。
基本ビター風味ですが、前後編でこまごまとした事件も有りつつ程良いところで甘さを投入してくる作品です。