むくげの日日是好日

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確かに好きだった、だけど誰かこの地獄から救って『喪服の花嫁』ネタバレ・感想


絶望から誰か、救ってくれ

喪服の花嫁 芽玖いろは on BLUE comics 祥伝社

あらすじ

大学生の雪刀は義父と二人暮らし。
義父は有名な作家。
母親は義父の面倒を雪刀にまかせ、他の男性のところへ行ってしまう。
そんな母親の面影を雪刀に求め、体に触れてくる義父。
雪刀は義父を尊敬しているため、どんな扱いも耐えてきた。
だが、義父は作品を作りだすことに疲れ、精神的に参っていた。
それでも、自身の名声のために自分以外の人間にも息子を差しだす。
そして、そのことを義父に詰られる雪刀。
それでも、義父のことを見捨てることはできず、未だに作家としての義父を尊敬し続ける雪刀。
そんな雪刀にある出逢いがあり、彼の人生が変わっていく―…。


芽玖先生の作品は作家買い対象なのですが、この作品は重めです。

・義理の親子で近親相姦
・再婚相手だった母親が子供を置いて行く
・義父を尊敬する子供
・母親の姿を息子に重ねる義父
・名誉の為に息子を売るくせに、その事実が許せず息子を怒鳴り縋る義父
・作家である義父に隠れてこっそりエッセイ執筆する息子
・息子の才能に怯える義父
・知らない人たちから性的かついやがらせメッセージが届き精神が不安手になる息子
・偶然知り合う大人の男性に惹かれる息子
・奇しくも義父と男性の名前が同じ
・男性は過去に教師をしていて自分が原因で生徒が自殺している

重い……。
一冊に盛り込み過ぎじゃ…と思う程に、重い。

タイトルの「喪服の花嫁」、一見すると未亡人的な…と思いそうですね(そうかな?)
内容は先生曰く「まろやかになった」と言えど、かなり重い作品です。

義父に憧れて文章を書きたい雪刀くん。
本当にお父さんのことを尊敬しているんだな…。
ここだけは母親が置いて行ったことが少しだけ薄まる。
何せ、母親にお願いされて頷く雪刀くん……。
その後は義父がスランプ気味になって地獄だけど。
最初は仲良しだったからこそ、余計に見捨てられない(憧れと想い出補正)
辛い……。

その上で何故か知っている人知らない人たち構わず性的ないたずらメッセージ。
盗撮もされます。
知っている人は義父関係だとして、知らない人すら義父がどこかで噛んでいるんじゃ?と思わずにはいられませんが、そのあたりは明かされず。
義父、酷いな……どれだけの人間に売っているの。
そして、メッセージを見つつ義父のせいだと分かっていてもそれを拒めない雪刀くん。
はー……辛い。
その上、学校の先生からもメッセージ来るあたりどうなっているのか……。

こんな状況だからこそ、義父に関係ない自分よりも年上の人に縋りたくなるのは仕方ないと思います。
なぜなら、義父がその対象から外れてしまったから。
酷いやり方で、降りたから。

縋られる男性・後藤さんは後藤さんで過去にいろいろあった人。
そこに縋ってくる雪刀くんを受け入れるのは勇気が必要。
ただ、雪刀くんが頼ってくることで後藤さんも光があるし、救済もある。
あと、義父と後藤さんの名前が同じなのも……。
救済案件なの?

そもそも母親の再婚相手のところに置いて行かれる子供、という設定だけでも「うわぁ」となるのに、その上で義理の父親からの性行為
母親の名前を呼びながら求められる体。
……まろやか案件になったとはいえ、かなりのものです。
描写自体はかなり少なめなので(されていることははっきりわかる)この辺りも含めまろやかなのか、それとももっと激しい展開をカットしたのか……。
芽玖先生は好きなのですが、これ以上の案件だと手に取りにくかっただろうな、と思います。
※読むまで分からないので読んだ後に打ちひしがれること必至。

それにしてもこの再婚相手と上手くいかず子供だけを再婚先に置いて行くのは、なんともなぁ。
「好きな人が出来たから、行くね。あ、もう大きいからいいよね? じゃ、お父さんの面倒みてあげてね!」
このパターンばかり読むの本当に……。
なぜ置いて行く子供を大丈夫だと思うのか。
いや、自分の幸せの方が大切なのか。
そう思われても仕方ないと思うのですが、どうですか。

再婚相手ということは血のつながりがない場合が多い。
そこに置いて行かれる子供……。
娘が置いて行かれても、息子が置いて行かれても全部性行為、たまに暴力に繋がるのも……。
これ、父親が置いて行くパターンだと壮絶な精神的・肉体的暴力になります。
※私が読むのが女性向けが多いため、そうなるのだと思います。ジャンルによってこの辺りは立ち位置変わりますしね。
……いや、もう、子供を置いて行かないで……とフィクションでも思ってしまうため地雷よけに必死です。
踏んだ場合は本当に幸せになってほしい
その上「ざまぁ系」も苦手で復讐ヒャッハーになれないため、辛い。

復讐がないと確かに「えぇー!あんなことしたのに、何もないの?あの人たちは幸せなままなの許せない!!」と思うのもわかります。
わかるけれど、復讐は復讐しか生まないため、そうなると関係ない人たちも巻き込む可能性もありますから。
堪えて!なんで!のやりとりも辛い……。


縋る大人に性的・肉体的暴力を振るわれる子供。
この展開には絶対的な光が欲しい派です。
それが恋愛でなくてもなんでもいい

とにかく、光が欲しい

今回帯に「光と救済」としっかり銘打ってあり、安心できた点は良かったです。
この作品は光がしっかりあるので、良いですが割と性関係で結構抉られます(※これは人によるので大したことないと捉える方もいると思います)
ただし、救済の一つは後藤さんだろうけれど、もしかしてあの件(※オチに関わるので伏せます)も救済になるのかな?と思うとそこは少しモヤっとします。
でも、あの件に関してはそれ以外方法がなかったのだろうな、とも思います。
そのくらい内容がアレだった。

今回は本当に描き下ろしの甘さが染みます
よ、よかった……。
描き下ろしが甘くて本当に良かった
本編の味わいそのままにじんわりで終わってほしい、という方もいると思いますが、私はこの甘さが欲しかった
幸せそうでよかった……。

少し重めの話を読みたい!
義理の親子のドロドロを読みたい!!
そういう方にお勧めです。
光があるため、最終的にはそこまで引き摺らないかな、と思います。

紙書籍等
喪服の花嫁

祥伝社 2019年08月24日頃
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