むくげの日日是好日

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人生なんて気持ちひとつで変わるもの『Loved Circus』ネタバレ・感想


すべては君の気持次第

Loved Circus 朝田ねむい Canna Comics プランタン出版

 あらすじ

ケイは女性にお金を貢ぎ、借金を作っていた。
その借金を返す事が出来ず、自殺を選んだはずなのに、何故か目が覚めると手足が縛れている。
そしてケイを囲む男性たちに借金を返す選択を迫られる。
だが、ケイは彼女といた時間に後悔はないと返す。
ケイの態度に困る男性たちだったが、そこに貢いだ女性が働いていた店の従業員たちがやってくる。
ケイが彼女は大丈夫なのかと尋ねると、彼女は臨時収入が入り家族と外国旅行中だと告げられる。
言っていたことは全て嘘だということを知り、項垂れるケイ。
そこにシロという名乗る男性が仕事の時間だと現れ―…。

登場人物
ケイ…女性にお金を貢ぎ借金まみれ。自殺しようとしたところをゲイ向け風俗店サーカスに拾われる。
シロ…サーカスの従業員であり一番古い。どんな客にも対応できる。信奉者が多い。
ジョー…ギャンブルが好き過ぎて借金を作りサーカスで働く。入ったお金をその場でつぎ込むため基本的にお金は無く、店を通さずに客を取る。
リン…ワケ有りでサーカスにて働き続ける。現実主義。食事担当。
団長…サーカスを運営している。優しい。
マリア…女性が働く風俗店クワイアを運営している。厳しい。
ソム…ジョーを好きになる。ジョーと身体の相性が最高。
モモクワイアの従業員。ケイに作り話をしてお金を貢がせた。

サーカス…ゲイ向け風俗店。何か訳ありの人達が働く場所。
クワイ…男性相手の風俗店。

わかりやすく騙されたケイくんですが、結局働かされる場所でも騙されるという…。
借金のために男性用風俗で身体売ってね!
いや、おかしいだろう!となりそうですが、そうはならない。
ヤミ金から借りているということもあるし、取敢えず真面目なので返すか、という気持ちになるのが凄い。
生きていれば悪いことだけじゃない、とは言うもののここまでわかりやす過ぎるはめられ方だと何かを呪いそうですが、ケイくんは呪わない。
何故なら、騙されてはいたけれど彼女といた時間は幸福だったから。
……風俗あるあるじゃないですか、と思いますが結局人の幸せなんていうものはその人が決めることなので、周りがとやかく言ったところでどうにもならない。
これは風俗をネタにしている作品では割と出てくるので、騙された、きー!というよりはあの時間夢を見たからいいの、の方が多いのではないかな。
ザマァ系だと違うでしょうが、読む際にザマァ系は回避しているので「夢を見た」という方が多いです。

こういう流れで働くことになったケイくんですが、真面目だし順応性が高いためあっという間に馴染むの凄いですね。
こういう適応能力っていうのは本当に大切だと思うのでケイくんのこの感じがシロさんには良かったのだろうな。
シロさんはシロさんで一番古くてそつなくなんでもこなしているようでとんでもない闇を抱えている。
あとの二人ジョーさんはセックス好きで、お金貰えるしまぁ自由に生きるよ的でリンくんは現実を見ている。
二人はすでに借金を返済し終えているのに、サーカスから出て行かないのはサーカスに思い入れがあるとかそういうわけではなく、何となく。
ジョーさんは天職だと思っているみたいだけれど、リンくんにはそういう感じがしない。
でも、天職だと思っているジョーさんの方があっさりと仕事を捨てる辺り、本当に人生って不思議なものですね(愛燦々)

モモがケイくんを見た時に知らない人扱いをしたけれど、接客業で売上があるのだから覚えていない、なんてことはないと思うのですがどうでしょう。
クワイアで働いている(※休んだ人が出たから臨時で頼まれた)ということは金がない。
客じゃなきゃ、どうでも良い存在。
ということでいいのかな。
店から出たら全員忘れる、というそっちに振りきった(これはこれで闇問題)設定なのかもわからないけれど。
ケイくんは純粋だから、このモモの態度で自分を覚えていないとショックを受けるわけです。
あんなに騙されたと周りが言っても、まだどこかで信じたいケイくん…。
こんなに純粋なら、シロさんに目を付けられますよね。

シロさんという闇を支えるために団長とマリアさんでサーカスを続けている。
始まりからしてなんだか破滅の匂いがするのですが、やっぱり無理だよねぇ、という。
これは団長が優しすぎて本当にどうにもならなかったんだろうな。
マリアさんは夫である団長を好きだからこそ、シロさんのことは少し目を瞑った感がある。
二人ともシロさんのことは好きだけれど、温度差が見えるんですよね。
ケイくんに関しても早くサーカスから出て行きなさいね、的なことを言いますし。
サーカスにい続けることは幸せだとは思わない。
ここが、何とも言えない気持ちになる。
団長とマリアさんは互いに風俗店を経営しているのに、ここにいると幸せになれないと思っているのか…。
生業として割り切っているけれど、出て行けるならいった方がいい。
そう思っているかと思うとなんとも…。
まぁ、団長は風俗店したくなかったけれどシロさんのためだし、マリアさんも団長のためだし。
誰かのためだけれど、店が良いとは思ってはいない。
でも、シロさんがここ以外で生きられないこともわかっている。
恐らくこれまでにも何度も何度もシロさんを別の道に、と思っただろうし言ったりもした。
けれど、シロさんは頑なにそれを拒否する。
それだけでも厄介なのに、シロさんは更にサーカスというアリ地獄に別の人を引き摺りこもうとする。
リンくんに言わせると「一緒に心中してくれる人」ということらしい。
シロさんは自身の能力を信じているし、団長やマリアさんと意見は違えどこのままサーカスは続くと思っている。
だけど、一人では回せない。
だから自分の信者を増やし、お店に貢献させる。
客だけではなく、仲間内に信者がいればその方がやりやすい。
でも、シロさんの望むままにそんな人物はできないんですよ。
ケイくんを引きいれ、身体で籠絡させようとしてもそこを拒否された時のシロさんの絶望感ってどうだったんだろう。

ジョーさんの自由さにソムくんの執着がピタッとはまったところは良かった。
この二人のその後を想像すると楽しい。
リンくんに今までの生活と全く違うとゲラゲラと笑われていましたが、そんな相手が見つかったことが素晴らしいと思う。
リンくんもなんだかんだ言いながら好きな人と幸せになってほしい。

シロさんは……いろいろありすぎるほどあって、ようやく周りが見えるようになって良かった。
親のこととかその後のこととか、ありすぎたからこその結果でしたがケイくんと出逢えてよかったね、と思いました。
少しケイくんに執着する感じが弱いかな、と思いますがそこは今までにいないタイプだった、ということで。
心情を語る部分が最後まで出てこないので、何を考えているのか読めないタイプです。
心情を語って、ようやく「あぁ…」と言う感じ。
ケイくんも弱い気がするのですが、そこは救ってくれたから、ということで。
本編は未来を予感させるもの。
描きおろしは幸せな現在。
そんな感じなので描きおろしがあって良かった
描きおろしでジョーとリンのサーカス入店経緯などがわかります。

この話も救済よりの話なので、性風俗店だし、ヤることヤってますけどエロエロが読みたいという時よりはしっとりとした話が読みたいという方にお勧めです。
ちゃんと愛情もあるけれど、その愛情には色んな感情が混じった末の愛情。
関係的にお互いを必要としているということもわかるし、大切に想っていることもわかる。
全体的に甘い、というよりはしっとりとしています。

相変わらず絵が好みで話も好きなので良かった。
1冊で綺麗に纏まっています。
余韻も少しあるけれど、この余韻を楽しむくらいで良いのだと思います。
続きがあればあったで喜んで飛びつきますけれど(どっちだ)

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