むくげの日日是好日

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何もないことは地獄じゃない『マイリトルインフェルノ』ネタバレ・感想

願いごとが叶えられれば幸せになるの

マイ リトル インフェルノ 朝田ねむい on BLUE comics 祥伝社 

 あらすじ
新井仁は日々の生活に辟易としていた。
受験を機に東京へ行き、今までの生活を変える予定だったのに受験に失敗してしまった。
望んだ生活ではないこの日々から抜け出す気力もなく、ただ生きる。
帰り道に映画館に貼ってある『アラジンと魔法のランプ』のポスターを見て、大学で声をかけてくれる女性から新井仁を略すとアラジンになると言われたことを思い出す。
自分なら何を願うだろうか。
そう思った矢先、車のトランクから人が出てきて―…。

自己肯定が低い仁くんと願い事を叶えてくれる真神まゆみこと愛称まーくんの話。
新井仁でアラジン。
実際は「ひとし」と読むので違いますが、ここに出てくるまーくんは魔人のように願いを叶えてくれる……といっても、ほぼお金関係なんですが。
自己肯定が低く、何をやっても「どうせ…」と思っている仁くん。
だけど、沸点超えるととんでもないこと(※カッター持ち出して切りつけたり、放火)するのがなんとも……。
何もできないだろう、とからかわれ続けて、実際同級生には何も言い返せなかった。
ここにきて更にまーくんという理不尽全開な人間が関わってくる。
しかも、無理矢理。
身分証明書から財布から全部とられて(※まーくん曰く借りた)その上身体も奪われるのか、と思ったらそりゃ切れますよね。
恐怖から漏らして、気持ち悪さから嘔吐してしまいますが、その姿をゲラゲラ笑われるんだから…。
なんとも不穏でしかない始まりなのですが、ここからの盛り返しですよ。

まーくんはネットの天才だからハッキングはお手の物で悪いお金を自由に手に入れることができる(犯罪でしかない)
目の前にいる仁くんはそんなまーくんに対し口は悪いけれど、やや流されがち。
そしてまーくんも言っていますが、「いい性格」(※誉めてない)なんですよ。
今までからかわれてきた相手がバイト先に現れ、まーくんが撃退してくれる(※まーくんがそれをどう思って行動しているかは謎)
そのことを喜ぶ仁くん。
犯罪で追い込むところまでは嫌だけど(保身もありそう)、嫌な目くらいは遭わせたい。
このあたりが「いい性格」なんだと思います。
よく出てくる「もう、いいんだ……ではなく、自分は手を出さないけれど、自分にとって味方かどうかわからない人間でも相手に少しやり返しくれたことスッキリしている感がある。
それだけのことをされていた、ともとれるのでここはもっとやれ派もいそうです。
何せ仁くん、家を出て東京に行って大学デビューする気だったから…。
東京への憧れというよりはきっと他の地なら今の自分を変えられる、きっとこんな目に遭わない、きっと毎日楽しいはず
そんな思いがあったのに、母親の失業から無理そう、重圧に耐えきれず受験に失敗。
何かを呪いたいけれど、呪う気力もない。
ゆえに毎日が憂鬱…というこの負の中にいると思っているところにまーくん登場。
不幸でしかない、と思っていたけれどまーくんと一緒にいる内に慣れていく仁くん。
基本的に流されやすいんですよね。
やり返してくれたりご飯作ってくれたりするから「あれ、思ったほど悪い人じゃないのかな?」って刷り込みみたい。
財布とられて家に住みつかれているのに(しかも悪い人に追われていた

こんな始まりの二人ですが、ナカモトさんというまーくんの元カレの出現によりピンチに!
えぐいやり方で攻めてくるナカモトさんがいいな。
ナカモトさんのスピンオフ読みたい。

全体的にほぼほぼ犯罪なんじゃ…?というやりとりが多いですが、捕まらなければ大丈夫!
というノリでサクサク進みます。
そのあたりを深く考えるとちょっとどうだろう、と思ってしまうので(※誰も反省せず開き直っている)ハッカー怖いな!くらいで止めておくといいかもしれません
ナカモトさんにとっての魔人はまーくん。
だけど、同じ力を持っていても仁くんはまーくんを魔人だとは思っていない。
何故かお金を生み出しているけれど(犯罪)まーくんの必要性はそこじゃない感じがする。
仁くんにはネットでの友達はいるけれど、実生活は一人。
だからこそ、まーくんという謎の人物で悪い人っぽいけれど、傍にいる内に慣れて行き一緒にいたいと思う。
だけど、魔人とは違うんですよね。
ここがナカモトさんとの差か…。
まーくんはナカモトさんと一緒にいるのは楽しい。
だけど、だらだらと過ごそうとするまーくんに対ナカモトさんは更なるスリルを求め続けている。
ナカモトさんにとっての魔人がまーくんだから。
無敵だって錯覚して、まーくんもきっとこの感覚を共有していると思っている
そこが、終わりの合図なんですよね。
まーくん、作中では殆どできないことないっぽかったけれど、実は喧嘩が弱いとかあとがきにあるし、他にも出来ないことや苦手な事あるんだろうな。
完全な人じゃないんですよ。
魔人じゃない。
だけど、ナカモトさんからするとまーくんは夢みたいなものだったんだろうな。
仁くんはまーくんを人だと思っている。

まーくんは夢の中ではなく、現実社会で生きることを選択している。
ただ、まぁ、だらだらするのは好きみたいだけど。
ハッキングしてお金巻き上げているみたいなのでこれはこれで…どうだろう。
それでも、いいって仁くんが言った時点で勝敗はついた。
ナカモトさんの切り替えの速さが素晴らしい。
未練はあっても、そこを滲ますだけにするナカモトさんが素晴らしい。
あと、まーくんに語りかけるナカモトさんは甘言だらけで今までも沢山の人を籠絡してきたんだろうな、という口の巧さ。
スピンオフ読みたい(二度目)

結構酷い始まりなんですけれど、最後はなんだかんだ言いつつも甘く終わっていています。
犯罪の匂いはそのままなのに、ぼんやりと全てを受け入れる仁くんとゲラゲラ笑いながらも仁くんを甘やかすまーくん。
犯罪を気にしなければ読後感は悪くないんじゃないかな、と思います。

描きおろしはこれが重要なんだな、と思う内容。
1巻は仁くんが寝てしまい、世話を焼くまーくん。
あれほどまーくんに怯えていたのに、あっという間に隣で平然と眠れるところまでいっている仁くん。
まーくんが仁くんを気に入っているところがはっきりと明言されている。
本人に伝えてないから意思疎通が難しい。
でも、これ仁くん聞いたら怒りそうでもあるな……。
誉めているように聞こえない。
でも、この危機感のなさ(仁くん、本当にまずくないか…と思う場面が何度も出てくる)がまーくんにとっては良いんだろう。

2巻はドッキリをしかけるまーくんと本気で驚くし悲しくなる仁くん。
ドッキリしかけるのがまーくんじゃ驚きますよね。
幸せだし、甘いので良かった。
お互いにちゃんと想っているのがわかる可愛い話。
もう1本はナカモトさんとマー君の密月。
こういう世界もあったのに、と思うとなかなか切ない。
でも、ナカモトさんはああだからこそナカモトさんなんですよね。
まーくんって自由人だけど愛情はたっぷりだな……。
でも、自由人だからどこで感情が変わるかが分からず難しい。
ナカモトさんも結局わかった、と思っていたからこそ間違えたんだろうけれど、そこを我慢していても続かなかったかな。
何故なら、ナカモトさんはまーくんとは違うベクトルで欲望に忠実型だし破滅というスリルを味わいたい派でもあるから。
そこを上手く潜り抜け続けられる、と思っているし自分にはその才能があると思っている。
初めてへし折って来たまーくんとは合わなかった、ということで。
そこの見切りもちゃんとつけられるほどにはプライドもある。
ここが仁くんとは違うかな。
全てをなげうってぐちゃぐちゃでどろどろでもいい、まーくんへの感情をぶつけていると変わっていたかもしれないけれど、全て仮定の話だしそうなると「ナカモトさん」ではなくなるのかも。
あと、ナカモトさんのせいでまー君は死んでしまったことになっているため、偽名生活になったのもまー君からしたら怒る案件です。

帯は「最悪な出会いから、」(1巻)「スパダリ攻になるまで。」(2巻)※引用
スパダリ攻、とは。
一瞬考えてしまいますが、まぁ、魔法のランプ的な魔人になぞらえているわけですし、うん。
特典ペーパーは可愛い二人とアレな仁くん。
まーくんに思い切り性格悪いとか言われている。
アニメイト特典のリーフレットが今見当たらないので(酷い)あとで追記します。
ペーパーは挟んであるけれど、リーフレットサイズの問題で別にしていたらどこかに…(整理整頓)

相変わらず絵が好き。
ただ、この前に出ている作品群よりも線が綺麗です。
表紙もインパクトがあり、カバーとっても鮮やか。
1巻は仁くんメインで背景オレンジなのでカバー下はグリーン。
2巻はまーくんメインで背景グリーンなのでカバー下はオレンジ。
タイトルのみですが、印象的。

自由人な人がどんな風に堕ちて行くか、を見たい方にお勧めしたい。
まーくんは好きになった人には尽くすタイプなのが、良いですね。

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