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愛情と信仰心の境界線はどこに『Dear,MY GOD』ネタバレ・感想


つがえるかどうかわからないけれど、救済したい

Dear,MY GOD 朝田ねむい on BLUE comics 祥伝社

あらすじ

ロースは買い物をするため店に入るが、そこでナイフを持った少年が窃盗を行う場面に遭遇する。
店主は車いすのため相手を捕えることが出来ず、ロースに捕まえてほしいと願う。
ロースが外へ出ると少年は隅でうずくまっており、失敗したのはロースのせいだと責める。
話を聞くとどうやら少年の信仰している神への献上物として汚れた金を集めているという。
神父であるロースはその教えは間違っていると諭すもリブと名乗る少年はただひたすら自分の信じる宗教の正しさを説く。
リブをこのままにしておけないと感じたロースはリブを騙す形で宗教団体の建物に入り込むが、逆に捕えられてしまいー…。


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依存系の果てのような内容です。
リブの背景には両親が宗教にはまっていてその生活に対し何も思わない(その世界が当たり前だから)
それなのに、両親は事故で死んでしまう。
つまり神は助けてくれなかった。
両親の信じていたものは偽物の神だと思っていると次は姉が別の宗教を信仰し始める。
今度こそ、と思うも姉が刺されて殺されてしまう。
この神も間違いだった。
そして今の神と出会い、今のところ何もおこっていない。
寧ろ精神的に楽だ。
つまりこの神は本物。
そう思っているので、世の中の悪いお金を集めて浄化させることは間違っていない。
悪いお金なんて存在しない方が良い。
その上、自分達が悪いお金を集めて教会に持って行くことは善行にもなる。
明らかにダメな匂いしかしないのですがその場で洗脳といいますか「不幸の連鎖しかないところに一筋の光/安寧」があると信じてしまいますよね、というわかりやすい例。
しかも、リブの教会では薬が精製されているときたら…。
精神が安定するために導師がくれるその実が欲しい。
その為には悪いお金を集めなければいけない。
それがおかしいとは思わない。
この教会にいれば精神が安定するから。
実を食べれば平気だから。

ここでロースはなんとかリブを助けようとしますが、謎のつがい制度(ノアの箱舟的な思想かな)によりリブのつがいにさせられる。
本当は男女の方がいいけれど、という辺り小さなコミュニティーを発展させてそこで生まれた子供たちも同じことを強いるつもりなのかな。
肉体的快楽で縛るなら同性でもいいわけですから。
集められているのが子供が多い印象なのも洗脳しやすいのかも。
ちなみにつがいがいないと新しい地には行けない。
お金を集めるかつがいを作るか。
それを不審に思わない(考えることを放棄しているのかもしれない)世界で行われる絶対的な存在が操る宗教…。

結局ロースはこの宗教を解体させますが(薬関係を警察に通報)この後のここにいた人達を思うとなんとも…。
あと、人数分の毒薬も見つかっているのでコミュニティがどうにもならないなら最終手段は集団自決なのかな。
それが楽園というならば、そう説得させるのかな。

BL要素はつがいになる時にロースがリブに無理矢理されるところですかね。
リブは肉親がおらず友達もいない。
だから誰ともつがえないと思っていたのに、そこに自分を救おうと近付く人間がいる。
ならばこの人をつがいにしてしまえば「幸福の地」に行ける。
愛情というよりはどうしても必要だから、という感じです。
一方ロースは何とかリブを救いたい一心。
この時点で二人の感情がベクトルが違う訳です。
強い依存と救済ですからね。
でも、拠り所だった宗教を奪われ、奪った相手は自分のつがいと定めた人間。
憎悪で一杯ですが、そこもロースの救いたい、というただひたすらにその思いを伝え祈るロースにリブはロースを神と定めてしまう。
どうしても自分が依存する対象が欲しいんですよ…。
そのことに戸惑うロース。
リブは自身の神と定める度に刺青を彫るわけですが、ロースを彫っていいか、と尋ねた時にロースは怖くなるわけですよ。
純粋過ぎる思いはやっぱり狂信的なものになり得ますし。
タイトルもね。

本編は一応無理矢理も含め一応エッチはあるけれど、甘さ、というよりは依存と絆されが強い感じです。
描きおろしで二人の距離は縮まっているけれど、その後ちゃんと恋愛になるのかどうか少し微妙に感じてしまうのはやはり依存が強いからなのかも。
寧ろ絆されたロースさんの方が恋愛色が出るのかもしれない。
けれど、今後リブにとっての新たな誰かが出てきた時にどうなるのか…。
終わりはなんとなく、その後もありそうな雰囲気もある。
未来の約束というか、願いもしている。
だけど、と思ってしまうのはやっぱり依存問題がちらつくからかな。
ここで終わるのが一番美しいのかな。
重い内容の割には読後感が悪くないのは救済がしっかり描かれているからだと思います。

同時収録
はなばなし
酔っぱらったハナは閉店した花屋に訪れるも一鉢だけ外に出ていることに気付く。
酔っているためそのまま持ち帰り、次の朝後悔するハナだったが鉢植えから声が聞こえることに驚く。
その鉢は神様に話せるようにしてもらった、と話しかけてくるのだった。
困ったハナだったが、花屋に行くも締まったままだった。
おかしい、と思いつつハナはその鉢と生活を始める。

するとある日鉢が人間の姿になり、その姿は花屋の店員のミキだった―…。

神様関係作品が続きます。
こちらはちょっとファンタジー要素が強い。
鉢植えが話しだし、次に人の姿になって同居が始まります。
しかも、人の姿になってからの色んなことの吸収力が早く、ハナさんはこの先どうしようかと悩む程。
そして、気になる花屋は相変わらず開いていない。

ハナさんが花屋へ行く理由は謝罪。
車に乗っていた時に鉢植えを割ってしまい、その場でお金を払って済まそうとしたところ花屋のミキさんに怒られたから。
その謝罪に通っていたのに、まさか鉢植えが人になってその姿がミキさんで。
混乱する中の生活なのに、とても居心地がよくなっていきますます困る。
相手はハナさんではなく、あくまで植物。
それなのに、このまま過ごすなんてことは無理だし、どうしたらいいのか。
そして何故ミキさんはいないのか。

互いに後悔している瞬間に関わる神様。
そして神様らか出された問いに答えることで互いに望む結果になる、という。
ハナさんの前に現れる神様は一番恐れている者の姿。
ミキさんの前に現れる神様は拠り所だった物の姿なのかな?
ここは触れてないけれど、恐れている感じはなく、またミキさんは今までずっと一人だった、という話も出てくるし。
一人だったのはミキさんが他人を拒んでいるからだそうです。
植物だけがお友達、という生活だったらしい。
神様的にはそんなのどうでもいいとか言うの凄いな。

こちらもBL…色というのはこれから感が強いまま本編終了です。
描きおろしにてこちらはがっつり始まりそうな雰囲気でした。
続きが読みたいですが、やはりこちらも余韻を楽しむべきなのかな。

朝田先生の作品は余韻部分が好きなのかもしれない。
この後どうなる?で終わるからもっと甘いものがほしい!という方には少し物足りないかもしれません。
とにかく絵が好き。
話も好きですが、BL色が薄いと思うのは否めない…。
二作とも良い作品なんですよ。
ただ、いちゃいちゃえろえろが読みたい!という時ではなく、しっとりとした話が読みたい時にお勧めです。


紙書籍等