むくげの日日是好日

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この世界を一度壊したい『このキスは記事にできない』ネタバレ・感想


知らないことを、教えてやる
このキスは記事にできない 西本ろう on BLUE comics 祥伝社
あらすじ
比嘉真夏斗はゴシップ系雑誌のカメラマン。
アメリカに長くいたため、日本の芸能界に疎いが命じられたまま被写体を追いかけている。
本田龍は日本で有名な俳優。
自身が納得いかない演技でも本田龍、ということで収められてしまう。
そんな二人が偶然に出会ってしまう。
だが、本田のことを知らない真夏斗は本田の美しさにいつか写真を撮らせてほしいと言う。
カメラマンなのに自分のことを知らない人間に出会い、驚く本田。
もう会うことないだろうと思っていた二人だったが、また偶然出会う。
しかも、真夏斗は恋人との性行為に悩んでおり、それを本田が解決してやろうと乗り出し―…。

不本意とはいえゴシップ系雑誌のカメラマンになったのに、芸能人にうとすぎる。
真夏斗くんは外国でカメラマンとして生活してきていたので仕方ないとはいえ、仕事に対するモチベーションがそのまま現れた設定となっています。

自分が撮りたい写真はこんなのじゃない、サクラの写真を撮れと言われても嘘は嫌だ。
こんな状態で出会ったのは日本で有名すぎる俳優、本田龍。
相手の事は知らないけれど、とにかくイケメンだし、写真映えするから撮りたい!
当然、そんな真夏斗くんに周りにいる人とは全く違う態度だと本田さんは興味を持つ。
持つけれど、恋愛感情となるのは少し弱めかな…と感じました。
真夏斗くんの新鮮な対応に周りとは違う、自分自身を見てくれている感があるのは分かるけれど。
ただ、恋愛感情は積もるばかりではないし、一気に湧く場合もある。
それ、運命の出会いって呼ばれることが多いんですけれど。
本田さんの熱量が少しずつ浸透しつつ真剣に本田さんのことを考える真夏斗くん。
真夏斗くんには彼女がいますし、彼女と喧嘩して本田さんのところへ行ったとはいえ、自分は彼女のことを想っている…と思うも上手くいかない。
もともと彼女との出会いは運命的だと彼女が思い込んだものだし、それ以降彼女の真夏斗くんいたいする対応に満足していなかった。
満足していないけれど、決定的な別れを示唆するものもなかった。
そんな中、訪れた運命の出会い。
本田さんに翻弄され、彼女のことを思いつつもどうしてもちらつくのは本田さん。
彼女とのことはきっちり片付き、それゆえに真夏斗くんは悩むし傷つく。
その悩みを解決するのは結局悩みを浮き彫りにしたとも言える本田さんなんですよね…。

また、日本で売れている俳優の本田さん自身も俳優としてもっと違う世界を見たいと思っているところが自分の撮りたい物を撮れないもどかしさとリンクするところが良かったです。
誰しも認める俳優でありながら、結局は事務所が選んだ役しか出来ないあたり、本田さんの悩みと苛立ち。
それなのに周りは本田龍として完璧だともてはやす。
だからこそ、真夏斗くんとの出会いが印象的だった。

舞台は芸能物ですがスパイス程度でまとめられています(※1冊で完結しているし、カメラマンと俳優だし)
芸能人の割に危機管理能力があるとは言えないのは今まで数々のスキャンダルをもみ消してきたというところと自暴自棄とも言えます。
同じような役ばかりでつまらない!
でも、人気ある!!
誰でもいいなんてお飾りは嫌だ、本田龍なんて壊れてしまえ、というその現れ。
……マネージャーは大変だろうと思いますが、一癖も二癖もありそうなたたずまいでたまらなかったです。

個人的にはマネージャーと本田さんの父親(事務所社長)の関係が気になりますが、あとがきに出てきた母親が凄く可愛いかったので(顔は本田さんそっくり)何も思わないことにしました。
マネージャーのスピンオフが読みたい。
そこに両親が絡むのいいな…と思いましたが、『この背中に爪を立てて』が結構アレだったのでそういうのだと辛いな…。
何でもかんでもスピンオフ読みたくなる癖いい加減にしたい。

西本ろう先生の美しい絵とともに、感情が溢れる作品だと思います。
先生の絵は綺麗でしっかりめの体を描かれるのでえっちシーンも美しい。
目の動きで魅せるのも素晴らしい。
ただ、真夏斗くんと彼女がそれなりに絡むシーンもありますし、行為もあるので苦手な方はご注意ください。
 
紙書籍等
西本ろう 祥伝社 2021年01月25日
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