むくげの日日是好日

BLコミックの感想日記。このブログはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

思い込みからの勘違いラブストーリー!『きっと恋に違いない』感想・ネタバレ


勘違いからの微妙な距離感のもだもだがたまらない 

 

きっと恋に違いない 西田 東 HANAMARU COMICS PREMIUM 白泉社

 


あらすじ

佐々木と牧野は同期。
課は違うが互いに課長という役職。
仲も良かった。
パソコンを修理に出している間牧野のパソコンを借りた佐々木。
だが、好奇心から開いてしまったフォルダの中には自分の写真が沢山収められていた。
どういうことなのかわからず困惑する佐々木だったが、牧野に尋ねることができずモヤモヤした気持ちを抱えてしまう。
そして自分を好きなのか、そう思ってしまった佐々木はその後の牧野の言動に気持ちが揺れ出してしまう。
どうしたものかと考えていたが、実は牧野のフォルダ内の写真は社内報に載せるためのものだと判明する。
自分を好きでなかったのかと気持ちが整理できないまま牧野のところへ向かう。
牧野はその様子に驚き、勝手にしてしまったことを詫びたことで佐々木は勝手に勘違いした自分の気持ちを忘れようと一旦牧野と距離を置こうとするが―…。

 

西田先生と言えば、この丁度良い感じの年齢ですよ。
今回の作品は西田先生が得意の中年~初老男性の貫録という人物はいないのですが、仕事をしている感があるんですよね。
先生の作品はいつもそうなんですが、仕事している格好良さがたっぷり詰まっている。
ただ、時代と共に流行らない仕事の仕方かもしれないですが、このやり方でのしあがった感のある人達が良いんですよ。
ギラギラしているところが魅力です。


・自分に恋愛感情を抱いているかもしれない※勘違い案件
・同期で仲が良い※微笑ましいのに急に意味深に見えてくる
・恋愛感情を自覚した途端可笑しくなる※王道の距離が出来るアレ。最高ですね。

どの点も王道中の王道です。
でも、ここに西田先生節が入ると一気に面白味が増すんですよね。
急に入れてくるギャグも味わい深い。

女性を口説くシーンもあるので苦手な方はご注意くださいね。
私はこういう色んな面にギラギラした人が好きなので気にしないのですが、BLにおける女性が苦手な方もいますので、一応。
西田先生の作品の女性は優しいもしくはかっこいい人が多いです(※上手く表現できなくてすいません)
はー男女どちらにしても口説き方、断り方が素敵なんですよね。
会話のセンスが好みなんだと思います。
少し芝居がかっているのですがそこが好き。

両想いになってからももだもだするのも可愛いです。
少しずつ、外してくる描き方が好きなんですよ。

好きだけど、このまま進んでいいのか。
今なら元に戻れるんじゃないか。

この葛藤もあるあるなんですが、好きです。
王道展開が好きなだけな気がしてきましたが、ここに作者の色が加わることでやっぱりその作品ならではの魅力なると思うんですよ!
恋愛のこういうもだもだ感が好きなんですよ……。
重いところもなく、可愛い話です。


同時収録
おまえの一番イイ顔を

あらすじ

官僚である柏木は妹のことを気にかけていた。
そんな妹から電話があり知らない間に友人の借金の保証人になっていたためAVに出ることになったと言われる。
柏木は現場に向かい、取敢えず請求書を見せてほしい、また場合によってはしかるべき期間に相談すると言う。
妹は兄に子の人達は悪い人ではない、また現場の人も金銭的解決よりは出演してくれる方が有難いと言い出す。
するとそこに出演していた男優がお金よりも一本出てもらう方が金になる、嫌がるなら行方をくらました妹の友人を探すと言いだした。
妹は友人を守るため自分が出演すると言い、兄は必死に止める。
その様子を見ていた男優は妹、友人を助ける代わりに兄が出演すれば二人は助けてやると言いだし、柏木はそのことを了承するのだが―…。


妹…なぜそこまで。
そう思いましたがきっと友達が良い人だったのでしょう。
勝手に保証人にさせられて、行方くらました友人のために自分がAVに出ようと思うくらいには…。
いや、でも……妹よ……。
素直に兄の言う「しかるべき機関」に相談するべきだったのでは?
それを言うなら兄も焦って妹の代わりにAV出るよというのも考えて発言すべきでは?と思いますが。
兄、官僚なのでバレたら大変なことになるのに……課長として他の人達への態度を見ると規律に厳しいみたいなのに……。

でも、この話AV出演(男優に口淫される)後に男優がしっかりと省庁へやってくるんですよね。
そうじゃないと話になりませんからね。

追いかけ回され嫌がらせを受けているのに、AV出演時に見た笑顔が忘れられない柏木……。

その笑顔を見たいと願う柏木……そして好きだと気付く柏木……。
普段とは違う状況下で笑顔見たからこそ感情が上手く整理出来ないだけでは?
そう思うのですが今まで知らなかった「優しい手と笑顔」に柏木の気持ちはもう決まっているんですよね。
悩んでも仕方ない、この感情を認めようと思う訳です。

非日常からの日常に戻る瞬間など、上手く話に絡めてあり良いです。
ここは会社員よりも官僚、というのが効いています。
AVから始まりますが、しっかりと落とし所もあり良い話です。

西田先生は話の作り方が上手いです。
しかも少しテーマが重い作品もあります。
内戦ネタもありますし、また他でも死を扱う話もあります。
でも、そこをしっかりと話に組み込んでくる力が本当に凄いと思います。
死んでいるから悲しい(敢えてこのように書いていますが、決して死を軽んじているわけではありません)ではなく、その「死」にはこの話が必要なんだ、と思う内容なんです。

絵に関して私は気にならないんですが西田先生ご自身が凄く気にしてらっしゃるんですよね。
それも先生の味じゃない…と思うのですが。

この件に限らず好きな作品に要望を出す事はもちろん分かりますが、そのことで追い詰めるのはまた別だということ。

私も好きだからこそ思う事もあるのですが、もっと言葉には気をつけたい。
でも、デジタルとアナログではつい言いがちなので気をつけよう…好みの問題なだけです。
悪いとは思ってません。
ただ、好みの問題です…。

とにかく西田先生の話を一度読んでほしいと思います。

ただ、西田先生の作品は割と暗めなテーマも多いため初めて読むなら今回取りあげた作品や『まだ愛は足りない』などの会社員の恋愛などが勧めやすいかな…と思います。
先生の作品はかなり集めたのでまだまだこの先も語りたいと思います。
一度読んでみてほしいです。
書店で見るだけでなくこういう時に試し読みが出来るのって本当に有難いです。
お勧めしやすい。

電子書籍は上下に分かれているところもあるみたいです。
上下巻の場合、上巻が表題作、下巻が同時収録の話です。