むくげの日日是好日

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口の中に自分のものではない甘さが残る『ジェラテリアスーパーノヴァ』ネタバレ・感想


甘くてとろけそうな恋愛がしたい

ジェラテリアスーパーノヴァ キタハラリイ BAMBOO comics Qpa  竹書房

あらすじ
セフレになってから半年以上経つにも関わらず、互いのことは一切知らないまま。
会う時はいつも決まった店でジェラードを購入する。
毎回同じ味を選ぶ里谷と毎回違った味を選ぶ政田。
知っているのは、互いの口の中の甘さだけ。
そんな関係を続けていく内に里谷は胸の奥で燻る感情に気付いて行くも、伝えることはできない。
あくまで、セフレ。
それ以上でもそれ以下でもないと言い聞かせている里谷だったが―…。

 半年経っても互いの本名を知らないまま関係を続けている二人。
体の相性云々、ということよりも続ければ続けるほど距離を測りかねてしまう。
そのくせ会うのは里谷くんの家。

里谷くんは大学生で政田さんは社会人。
里谷くんは同性愛者だけどさっさと経験してしまえ、から掲示板に書き込んでその時のあっけない感じを引き摺っている。
相手のことを思い出して、ではなくて「こんなものか」という虚無感に近い感情。
それでも、また相手を探して知り合ったのが政田さん。
あっさり家でしてますけど、危機管理的にはちょっとどうだろう、と思いました。
里谷くんの「お金ないし」に対し政田さんも「じゃぁ出すよ、」にはならないのでこの選択しかないのかな。

序盤はセフレということで里谷くんが女性からの好意について語るも、つれない政田さん。
セフレだからそのことに対して何か言ってほしいなんて願うのもどうだろうかともやもやする里谷くん。
しかも、この時点では好きなのかどうかもあやふや。
単に時間が合えば、後腐れなくできるから。
そんな理由だけで会っているわけです。
そのもやもやが恋愛感情だと気付いても、うまく言えない。
相手はいつだって同じ対応で、毎回買うようなジェラートみたいには甘くない。

このジェラートも里谷くんは同じバニラばかりで政田さんは毎回違う。
政田さんはバニラ以外も勧めるけれど、里谷くんは絶対に変えない。
ここも頑なな感情がみてとれて良かった。
安定のバニラ。
他の味も美味しいかもしれないけれど、冒険はしない。
ここの辺りが里谷くんを現している気がしました。
変えたいけれど、変えたくない。
美味しいって分かっているものだけを取り続ける。
政田さんは毎回違うことからいろいろ挑戦したい、知りたい人だと思います。
そんな二人だからこそ、これだけ会っていてもお互い本名を知らないまま過ごすんですよね。
里谷くんはいつだって別れを連想しているのかな。
知りたいけれど、知りたくない。
知ったら、知らなかった時には戻れないし、相手が中に侵入してくる感じがするのかもしれない。
初めての人とは別に揉めてもないし、嫌な思い出もない。
ただ、虚無感だけが体に残っている。
それを繰り返したくないのだろうけれど、一歩進むこともしない。
政田さんの知らない一面を見て、動揺してしまう自分を受け入れるまでの葛藤。
ぎゅうううっとなる場面が多かったです。
一方政田さんの方はなんでもそつなくこなすイメージで、深入りもしてこない。
ここのあたりが少しわかりづらい印象になってしまったかも。

里谷くんが自覚してからの感情の揺れ方、そして余裕がある雰囲気を出していた政田さんの本心が漏れるところ。
体から始まったけれど、しっかりと里谷くんの感情が丁寧に描かれていて恋愛のもだもだを十分に感じられる作品でした。
政田さんについては描きおろしでたっぷりとその辺りが深堀されますが、本編だけだと可愛がっているのはわかるけれど大人の余裕の方が強い印象。
描きおろし万歳。

カバー下は一緒に眠っている二人。
今まで一緒に眠れなかった分、このいちゃつきが可愛い…。

ジェラートが出てくるのでちょっと食べたくなるのが困ります。

可愛い話が読みたい。
えっちもたっぷりある方が嬉しい。
その上でしっかりと感情面も描いていると最高。
そういう方にお勧めしたい作品です。
続編もありまして、付き合ったその後なのでめちゃくちゃ甘くて、つきあったからこその悩みに向き合う話です。


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