むくげの日日是好日

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終わりは始まりへと繋がっている『エンドスタートライン』ネタバレ・感想


壊れゆく校舎に詰まる想い出と未来


エンドスタートライン 上田 アキ  gateau comics 一迅社

廃校を舞台にした短編3編と惣菜をテーマにした短編1編、そして廃校3編を絡めた描き下ろしが収録された短編集です。

 


エンドスタートライン』生徒×生徒

あらすじ

高校最後の年の夏に廃校となり、何となく味気なさを感じる早川。
陸上をやっている早川は慣れたグラウンドを求め廃校に行く。
しかし、誰もいないはずなのに何となく視線を感じると校舎の中へと入るとそこには窓に腰かけ煙草を吸う幽霊と名乗る男がいて―…。


高校3年生での学校移動って感傷的になってしまうのもわかります。
また、慣れたところで練習したいとこっそり入りこんでしまい、そこで幽霊と名乗る男が現れたら更に思い出が出来ますよね。

幽霊とのやりとりは廃校となった場所のみ。
そして、幽霊から向けられる熱い視線。
どうしてそんな視線で見てくるのかわからない、訊きたいけれ躊躇ってしまう。

わからないまま、廃校というか学校物あるあるの「誰も来ない場所だからヤりにきましたカップルに当てられる」ですよ!

幽霊だった彼も、しっかりと早川くんと出会ったことでスタートラインに立つことを決める。
燻っていた想いをしっかりと終わらせ、そこから新たな火を起こすという感じで人生をまっすぐ見ている感じで良いです。

建築する夕暮れ』元教師と元生徒(元生徒が手をだしているので恐らく年下攻めかと…)

あらすじ

校舎を重機で壊す吉沢。
彼はこの学校の卒業生だった。
壊しながら、彼の脳裏には学校での想い出が蘇る。
それは、ある教師に対する切なくて苦い恋愛感情だった―…。


教師と生徒!

しかもかなりの年の差(実年齢は不明)ですよ。

自分の手で壊すものに想いを馳せてしまうのはやっぱりその当時の想いが強ければ強い程感傷に浸りますよね。

教師終わってから、というのもポイント高い(この点でもかなり年齢が……)
高いけど、ちょっと考えるところもありますよ……。
卒業から会ってないのに、そんなに二人とも想い合っていたの……?
二人とも告白はしていないのに…?
……鈴木先生が色っぽいからいいか。

ふたり追いし、かの未来』生徒×生徒

あらすじ

廃校になってしまった学校から新しい学校へとやってきた黒宮。
何事にも無関心だった黒宮が唯一興味を持ったのが同じクラスの木下で―…。

話の内容的に廃校理由は学校の統合(合併)なのかと思ったのですが理由は不明。
黒宮くんは以前の制服のままで学ラン。
木下くんはブレザーです。
学ランが良かった、という木下くんが黒宮くんがいた学校には成績が悪くて入れなかったという会話をしているので転入先の方が良くないみたい。
また会話の中で黒宮くんは前の学校に4カ月しか行ってなかったと言っているから1年生なんだろうな。
そして、木下くんには中学の時から好きな人がいてその人は黒宮くんと同じ学校だった。
……で、偶然会うんですがブレザーっぽいんですよね。
元の学校はセーラー服なので、木下くんが好きな原田さんはすぐにブレザーを購入したのかな?
でも考えたら入学して4カ月で壊されるとなったらそのことは知らされているはずだし、転入先も決まっていただろうし……。
1年生の募集ってするのかな?
あれ、読み間違えているのかと思って何度読み返しても4カ月って言っているし1年生だと思うのですが……。
その後黒宮くん、ブレザーになっているので制服購入しているということだろうし。

時系列についてではなく、話としては丁度校舎が壊されるタイミングになります。
「短い間だったけど、確かに想い出あるから壊されるのは寂しい、でもこの先もある」(原田さんと彼氏のやりとりを要約)
この主人公ではないやりとりがこの話の肝なわけですね。

もちろん壊れて行く校舎(色んな人の想いが詰まっている)に黒宮は自分と木下の想いも反映させてしまう。

廃校というテーマは移ろいやすい学生時代の想いやらなにやらをぎゅっと詰め込み、さらにそれを壊すという行為も込みでしっかりと練られた話だと思います。
そしてその後、別の建物(病院)が出来る。
その場所を舞台に新たな物語が始まる。
ちゃんとそれぞれのその後を描いて見せる、というところで好きな作品です。

フロム・グリーンキッチン

一人暮らしの高野にはお気に入りの食べ物がある。
それは食堂などではなく、スーパーの総菜売り場のものだった。
常連である高野はその売り場で働く名切の作る物が好きだった。
だが、いつものように惣菜売り場へいくと名切が一週間休むことを知る。
残念に思う高野だがいつものように惣菜を購入し、トマトを取ろうとすると残り1個だった。
同時に手を伸ばした男性は高野を見ると譲ってくれた。
家に帰り総菜を食べるも味が違う様に感じ、またトマトも酸味を強く感じる高野。
翌日またスーパーへ行くとトマトの男性がいることに気付き声をかける。
そして話の流れでその男性の家で食事をすることになるのだが―…。

え?
この流れで男性の家に行くの?
そう思ってしまいますが、高野さんの雰囲気で何となくほんわかとしていますのでそこまで引っかからないかと……。

話としては好きな作品です。
同タイトルのコミックスがあるので恐らくこの続きの展開があるのだと思うのですが、どうなのかな。
読みたい。

※「作ってくれる人がいたら料理出来なくてもいい」などの会話があるので苦手な方はご注意くださいね。
作って食べさせたい人と美味しい物食べたい人の組み合わせなので平和です。


描き下ろし
クロスライン

三組のその後、です。
エンドスタートライン』の彼らもしっかりと始まりを迎える事が出来てよかった。
構築する夕暮れ』はかなり進んでいる感じで良かった。
同棲していますよ。
何と言っても鈴木先生の色気ですよ!
ひとつひとつの言動がもうーもうーもうー地団駄踏む程に色気がダダ漏れですよ…。
ふたり追いし、かの未来』ちゃんと原田さんへの想いを決着つけさせて良かった。
ただ、原田さんの想いはどうなの……。
彼氏いるのに、黒宮君のこと……。
簡単に感情が綺麗に想い出になるとは限りませんしね。
時間が解決してくれるのだと思う。

本当に上田先生の描く大人の色気は凄いですね。
恋が落ちたら』も大好きな作品です。
続編あって嬉しかった……。現在連載中なので早く読みたい……。

今回は3月31日ということで年度をテーマにこの作品を選びました。
晦日から新年、という感覚とは違うかもしれないですが場所によっては今日で終わり、明日から新しくなる。
一日は一日。
ですが、こういう感覚も大切にしたいです。

電子書籍になります。