むくげの日日是好日

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相手の感情が見えるのは良いことばかりとは限らない『ストロボハート』ネタバレ・感想

気持ちが見えるのは良いことなのか、どうなのか

ストロボハート 梅松町江 LINX COLLECTION BIRZ COMICS 冬幻舎コミックス

 


あらすじ
写真サークルに所属している啓にはある能力があった。
それは他人の感情が可視化されること。
それは晴れたり曇ったりというように相手の気持ちがよくわかる。
ただ、最近自分にハートが飛んでくることが増えた。
飛してくる相手は後輩の光太郎。
言葉にしなくともハッキリと向けられる好意に戸惑う啓だったが―…。

この可視化されるという設定が面白いな、と思いました。
心の声が聞こえる、ではなくはっきりとどういう状態なのか見える。
故に人の気持ちを察知するのが上手い人、とても気遣いの出来る人とみられる。

啓は小さな頃からこの能力を持っていたので慣れていますが、結構きついことも多いと思います。
分かりたくなくても筒抜けですからね。
良い感情ばかりではない。
実際、光太郎はモテるのですが啓に懐いているので「光太郎に好意を寄せている」人からは攻撃されるわけです。
言葉の刃ならぬ感情の刃。
怖い怖い。
啓が悩み過ぎるタイプではない為うまくいっていますが、メンタル弱いと無理……。

能力系の話は相手に教えるか否か、が重要なポイントなんですが過去に失敗している啓はどうしようか迷います。
それはそうですよね。
もし相手が「サトリ」や「サトラレ」でした!となったらやっぱり付き合う上で色々筒抜けになるというのはかなりの警戒されそうです。
本人が望まずともその力は発揮されるわけですから。
感情が筒抜けになっている、その時点で敬遠する方を責められるかどうか。
その点、この話の光太郎はその力についても好意的(光太郎、凄い)なので安心です。
傷つけたり傷つけられたりが殆どない。
唯一は光太郎に好意を寄せている女性からの感情くらいです。
それは、まぁ、嫉妬の範囲だと思えば平気。
傷ついたりはしないけれど、温度よ味(食べるんですよ……)などは分かりますが直接的に体が痛めつけられるというのはありません。
精神的にはキツいですけれどね。
特殊能力はあるけれど可愛い大学生のお話です。

スリーポイントミステイク

あらすじ
アパートの隣人が良く喧嘩をしていることに気を揉む三波。
気になって扉を開けると丁度一人の男性が追いだされたところだった。
追いだした側も男性だと気付き、同性カップルだと思う三波。
そして二人とも同じ大学に通っていることにも気付く。
追いだされた北上はケガをしており、その手当てを申し出る三波。
自分の所へ連れて行こうとする三波に対し追いだした西木原は行けばと言う。
彼氏なのに酷いな、という三波に対し赤面する北上だったが、気持ち悪くないかと問われる。
そんな北上に平気だと返す三波だった―…。

方角名前。
東はいない。
隣人が喧嘩しているからの~という内容ですが、北上君と急接近してこんなにいい人なのに恋人に大事にされていない!
ふんがー!という話です(身も蓋もない)
短編なのでサラっと読めます。

窓際のアクアリウム

あらすじ
堂島は入社5年目にしてようやく希望の文芸誌の編集部に移動できて嬉しかった。
堂島は作家の青浜の担当になるが、引き継ぎする前担当者から青浜がゲイだということを聞かされ、驚く。
顔合わせ場所で初めて会った青浜が実は堂島の同級生染谷朔太郎だったことで更に驚く。
そして二人の間には過去に染谷が堂島に告白したが、その際「勘違い」ということで処理しようとした過去があった―…。

若い時の後悔を今の年齢なら上手く処理できるのか。
染谷は当時とは印象が違い明るく社交的に振舞っている。
だから、もうあのことは吹っ切れたはず、笑い話になるはず。
それは処理した方がそうすることで自分の過去を何とか清算してあの時は仕方なかった。
でも、今は違う、上手くできる。
あれは若かったから。
理由をいろいろ付けてもされた方が上手く昇華できているかどうかは分からないんですよね。
今回の話の根底はそこで処理した堂島が笑い話として片付けようとする、もう二人の間にはわだかまりないよね!としようとする。
だけど、いくら上手く振舞っていても、当の本人の前でいつまでも上手く演じられないこともある。
吹っ切れた、と思っていても何かのはずみでパンと蓋が開く事はあります。
そのきっかけが何かなんて恐らく本人にもわからない。
歳を重ねた分、誤魔化し方も増えたし気持ちの切り替えも上手くなる。
だから、染谷は笑おうとあの時のことには触れずにいたいと笑うわけですよ。
全然上手くない笑い方で。
キューっとしますが、読了感は良いんですよね。
短編でこの二人はこの話では結ばれていない。
だけど、未来があるんじゃないかな。
ちゃんと二人が向き合った時、新たな道もあるんじゃないかな。
そんな気持ちになる作品です。

学生の頃は見えなかったけれど、歳を重ねると見える事多いですよね。
あと、受け入れ具合も違うかも。
子供の方が柔軟だとか大人の方が諦めだとかそういうだけでなく。
学生の頃のキューっとした感情、大人になったら上手く処理できるとは限らないけれど、あの時とは違うやり方がきっと増えているはず。
その中で常に最善を選ぶのはなかなか難しいですが、それでもなるべく一番良いものを選びたい。
ただ、難しいのは自分が良いと思っても全ての人にそれが良いとは限らないこと。
この折り合いをつけるのが本当に難しい。

梅松先生の作品はあまり酷いタイプの人は出てこず嫌なタイプだな、というくらいの線で止まってくれるのが優しくて安心。
だからこそ、梅松先生の作品は読了感が良いのだと思います。

あと、あとがきがコマ割りして周りを真っ黒に塗るスタイルです。
文字しかないコマばかりが続く時もあります。
今回の作品は絵が一つもない…。
あと、ご自身を蜂で描かれているので蜂先生が語っている時もあります。

言葉というかテンポが独特なところがあるのはツッコミのタイプかな?

窓際の~』がちょっと暗めの感想になってしまいましたが、本当に読了感は良いです!
ちょっと考え過ぎてしまったかも、ですが良い作品なのでぜひ読んでほしいです。
他にもお勧めの作品があるので感想を早く書けるようになりたいです。