むくげの日日是好日

BLコミックの感想日記。このブログはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

なんでもしてあげたい、させてほしい『君はパーフェクト』ネタバレ・感想


何でもしてあげたいけど、トイレは自分でして
君はパーフェクト 未散 ソノオ fleur comics MEDIA FACTORY

 

あらすじ
木関創也は人を世話したくて仕方がない。
どこまでも世話をしてしまうため、相手によっては木関に依存症になるため相手を選ぶひつようがあった。
そんな彼に現れたのは野間ゆず。
彼はトイレすら代わりに行ってほしいと言うほどの面倒くさがり屋。
そして彼は木関が探していた運命の相手の証拠である「ハートの方割れ」のアザを持つ人物だった―…。

あらすじを書いていてもちょっと上手く説明出来ていない感が漂っていますが、世話好き世話されるのが平気な人の組み合わせです。
ただし、世話好きが尋常じゃない程のレベルなので、相手をダメにしていってしまう
そんな木関さんが見つけたのが野間さん。
代わりにトイレに行ってほしいと思う程の面倒くさがり屋なため丁度いいと思われそうですが、重要なことは「世話を焼いてもらってもダメにならない」ということなんです。
どれだけ世話を焼いてもらって、全てをしてもらっても決して木関さんに依存しない。
彼がいなければいないでいい。
面倒だけど、別に構わない。
このくらいの感覚でないと木関さんに世話を焼かれる資格(?)はありません
実際、木関さんは父親も同じくダメにしてしまい、周りの人達も次々とダメにしていきます。
そんな中、唯一の相手だったのは姉。
そんな姉が言った「脚にあるアザはハートの半分。もう半分を持つ人は運命の相手」というおとぎ話のようなことを信じて、木関さんは相手を探し、とうとう野間さんと出逢うんですよ…。
運命の人、ですね、

爪を切りたい、靴下を履かせたい、ご飯を食べさせたい、マッサージをしたい。
したいしたいしたいのオンパレードなので、確かにこれに慣れてしまうと異存してしまいそう。
異存が酷くなると「自分でなにもしなくなる」という怖いルートに乗せられてしまいます。
木関さんも同僚に世話を焼いてほしいなんて軽々しく言ってくる人は覚悟してね、と言うくらいですから。
怖すぎる

だからこそ、自身で何もしたくないけれどしたいというならさせてもいいよ、くらいの野間さんがぴったりなんでしょうね。
今まで世話を焼いてきた人とは違い、自分がいなくなっても平気。
ここが重要なんです
木関さんの性質って一瞬いわゆる甘やかし系のスパダリなのか…?と思いますが、実際ストレスになるほどの世話焼きなので違うと思います。
確かに出来過ぎるほどの上で相手の全てをしてあげたい、というタイプなのですが、全部自分のためでもありますからね。
木関さんはその上で野間さんが大好き!!!なので良かったですけど。
これ恋愛感情なかったら本当周りが誤解しても仕方ない……。
そしてそれを全て受け入れてくれる野間さんで良かった……。
嫌がる人は木関さんに近付かないでしょうけれど。

でも、こんな野間さんをどうしたものかと見る人たちもいます。
そうです、会社の人たちです。
あれ、働いて…?うん??
どう見ても働いていないな…と感じるわけですね。
しかも社長の縁故採用ときているから、余計に。
何もしなくても縁故採用だから解雇される心配もない。
こうなるとやっかみの対象になってしまいます。
しかも傍でせっせと全ての雑用から何からをこなす木関さんがいると野間さんの面倒くさがり具合が更に目立ちますよね。

二人は寮生活をしているのですが、そこにやってきたライバル立川さん。
彼は木関さんと同じく極度の世話好き。
彼らは彼らで世話を焼かないと自身の体調不良に繋がってしまうため、これはこれで必死なんですよね。
野間さんという運命の人を見つけている木関さんですが、立川さんが怖い。
同じタイプだから取られそうと不安になります。
しかも、立川さんは木関さんとは違い「自分のせいで依存症に陥っても仕方ない」という思考の持ち主。
だからこそ、警戒します。
なるべく世話を焼きたいというストレスを発散させるため、立川さんは数多くの人を相手にします。
職場も寮の食堂。
ヘルニアのためお休みに入った人の代わりにやってきます。
一人で全員分の食事をこなしてしまう。
前の人と同じ仕事量では足りないから他にも色々としてしまう。
立川さん曰く「100人くらい面倒みるといいですよ さすがにしんどいです」(引用)とあるくらいですからね。
木関さんも手と頭を動かしていないとどうにかなりそうだと言い、仕事の合間に編み物をしたりします(もちろん野間さんのもの)
仕事は当然ながら人の何倍もしますが、それでも時間が余ってしまう。
だから、世話をどこまでも焼かせてくれる野間さんが必要なんです。
これはこれで本当にきついと思います。
そこまでしないと自分をコントロールできない。
立川さんは寮の食事を一人で全てをこなしていますが、まだ足りない
もっと世話を焼きたい
だから、それが出来ている木関さんを羨ましがりますよね。
自分たちのようなタイプは世話を焼く人間を分散させないといけないでしょう、と半ばあきらめも入っているから余計に。
それに対し木関さんは野間さんで満たされているから不満はない。
そんな人間がいること自体信じられない立川さんに対し、木関さんは姉に続いて野間さんが二人目。
幸せそうな木関さんに立川さんがお姉さん紹介してほしいと頼みますよね。
よほど辛いんでしょうね。
野間さんのことではいろいろ思うものの木関さんもその辛さがわかるから、紹介する事を約束してしまうほど。
そういう意味でも野間さん、お姉さんがどれだけ世話を焼かれても依存しないという稀有な存在だということがわかります。
稀有だからといって万人に受け入れられるかどうかは別ですが。
実際野間さんは会社で結構な評価ですからね。
仕事していないようにしか見えませんからね。
でも、木関さんの姉はそんな感じじゃなさそうなんですが、アナウンサーでイギリスにいるという情報しか出てこないのでわからないです。

それでは、本当に野間さんは何もしていないのか。
そう感じますよね。
野間さんはそれはもうトイレすら行くのが嫌だから代わってほしいと思う程の面倒くさがり屋ですが人は見ています。
だから、木関さんは野間さんが大好きでこんなにいろんなことを考えているのに!と周りに訴えます。
ただ、周りはそれに気付けない
野間さんのようなタイプの資質に気付くにはそれなりに彼を知る必要もありますが、大抵の人は「何もしていない」で終わらせてしまいその後は嫌味を言ったり陰口を言うんですよ。
嫌味も響かないのでいいサンドバッグのよう。
木関さんは怒りますが、それすらどうでも良さそうなところが何とも。
人は見ていますから、木関さんの感情の動きにも敏感です。
そうすると当然のように「お願い」をするわけですよ。
それだけで機嫌がよくなる木関さん。
基本的に何もしたくないけれど、お願いはしません。
だからこその威力。
本当、運命の人ですよね。

描き下ろしはいちゃいちゃする二人と立川さんの話です。
立川さんが好きなので嬉しかったです。

帯にもありますが『究極のわれ鍋とじ蓋カップ』(引用)とあるように、どんな形であれ必要とするものがそこにあれば、なんとでもなりますし周りがどうこう言うのは野暮。
先生の『とじ蓋がいる以上われた鍋でもパーフェクトです』(引用)が全てだと思います。
あと、先生が描いていらっしゃるように必ずしもそれは恋人でなくてもいいと思います。
程度はあれど、この二人のような関係はきっとあると思います。

スパダリとは違う世話焼きたがりはどんなものなのか知りたい方に読んでほしいです。
読んだ後、少し考えてしまいそうです。
作品としては全ての伏線を回収して、しかも甘い。
先生の作品のメインの人たちって基本的に周りに関係を明らかにしていて、周りは戸惑ってもそれ以上何も言わない平和な世界なのでいいです。
戸惑う理由は大抵性格の方ですしね。
不思議なやりとりが多いですからね。
この不思議さが癖になります。

それにしても今回も未散先生ワールド全開の作品でした。
続編がありますので、そちらも感想を書きたいと思います。

紙書籍等
君はパーフェクト

未散 ソノオ KADOKAWA 2019年12月17日
売り上げランキング :
by ヨメレバ