むくげの日日是好日

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自分のことはよく分かっているから放っておいてくれないか『世界は君で廻ってる』ネタバレ・感想


俺が可愛いと思うのは仕方ないでしょ


世界は君で廻ってる 緒川千世 GASH COMICS  海王社

※BExBOY COMICS DELUXE libreから新装版が発行されており画像も新装版ですが、紹介しているのは以前の方です。

 


 あらすじ
自分が地味だということがコンプレックスの牧に可愛いと言い寄るのはイケメンの深町。
からかわれていると思っている牧だったが、深町は突然キスしようとしてくる。
理由を尋ねると「可愛いから」と返され、それなら犬や猫にもキスをするのかと更に追求する牧に対し、深町は笑う。
犬や猫とはセックスしたいなんて思わない、と―…。

先生が好きだと言っている「地味と派手」の組み合わせ。
地味が逃げて派手が追いかける。
しかも、執着が酷い。
牧は自己肯定力が低めなのですが、深町は可愛い可愛いの一点張りです。
自分が可愛いと思っているから問題ない!というタイプ。

エセ床屋漫画
忠近は毎朝寝癖が酷い髪に悩まされていた。
そんな時は床屋の息子悠士が学校内で簡易床屋を訪れ直してもらうのだった。
いつものように直してもらい、ついでに髪を切ってもらうために目を閉じた途端キスされてしまい、戸惑う忠近。
冗談かと悠士を見るも、いつもと違う表情をしていることに気付き―…。

初BL作とのことで、執着はしているし先生のノリも出ている。
だけど、今よりもマイルド…。
あと、初期なので表紙はマウスで作画(着色も)していたとあり凄い。
もちろん現在とは変化もありますが、先生色遣いや雰囲気は印象がそこまで変わらない。
淡い感じの色の組み合わせが好き。


おろかしくもうつくしい
あらすじ
自他共に認める美貌を持つが何かと手がかかる晴海の相手をする亮平。
晴海はお礼とばかりに亮平にキスをする。
誤解されるだろ、と言う亮平だったが、晴海は亮平を想っていることを隠し茶化していた―…。

綺麗な人と出来る人の組み合わせ。
この綺麗な人が少し抜けている発言するのが好きなのかな。
ノリが同じ。
綺麗な顔に揺るぎない自信があって相手を陥落しに行く。
顔だけが自慢、みたいな。
それはそれでいいのか…?と思うけれど、それだけの自信があるならいいのかな。
そして出来る相手は全てをわかった上でちゃんと牽制しつつも踊ってくれるのがいいですね。
踊ってくれるけど、主導権は渡さないから綺麗な子は結局むきー!と膨れるけれど、好きだから仕方ないか、と納得するんですよ。
先生曰く「人間的に出来ている人と出来てない人の組み合わせが好き」(要約)とのこと。
そ、そうですね。
確かに、先生の作品……その組み合わせ多いですね。
出来てないから亮平を好きな人たちに当たりが強い場面もあります。
……これも好きなのか、他の作品でも周りの人たちが辛い場面ありますよね。
人間的に出来てない」を強調しているといえば、そうなんですが……。
繰り返されると抉られそう。

ヤスイタマシイ
あらすじ
里見に声をかけてきた後輩・森。
そして口を開き出てきた言葉は「誰にでも尻貸すんだって?」だった。
里見はそのまま森と寝る。
ただ、その際一回100円という対価を決めてしまったのだった―…。

軽く見せて、重さを感じさせない。
だけど、という内容。
描き下ろしがありその後の二人が描かれています。
タイトル通り『アカルイミライ』です。

極上デザート
あらすじ
夏目は甘いものが好きで周りの女性徒からたくさん貢がれている。
ただし、甘いものが目当てなため手紙などは一切読まない。
そしてそんな彼と同様に甘いものを貢がれる加地はそれほど甘いものが得意ではない。
夏目は加地の分の甘いものを食べるが、自分が食べたかったものを加地が食べた事に怒る。
それなら、と加地が夏目にキスしてきて―…。

サクサク進む内容。
感情が見えにくいのは読み込みが足りないせいなのかな。

この一冊は本当に先生の好きな物がぎゅっと詰め込まれたような短編集だと思います。
その後の本と比べても、その欠片があちからこちらにちりばめられている。
先生の執着の描き方は笑顔で追いこむパターンと主人公をズタボロにするパターンが多いのですが、初BL作です、と言っているあたりから片鱗が…。
それにしても収録作品全てが同人誌で発表されたもの+描き下ろし。
その逆で商業誌発表からの続編やスピンオフは同人誌という場合もありますね。
確かに同人誌の方が自由度は高いし、通販行ってくれる先生もいるのでそういう意味では当たり前の選択なんだろうな。

緒川先生の作品の中でも『世界は君で廻ってる』はかなりマイルドな作品だと思います。
読んだことのない人にはこの作品から勧めて少しずつギアを上げたい。
終わらない不幸についての話』も良いかも。
最初からトップスピードのマシンに乗りたい!という方なら『カーストヘヴン』か『ラクダ使いと王子の夜』あたりでしょうか。
※私は地雷が多いため刺激が欲しい方にはぬるいかもしれません。

ただ、『カーストヘヴン』は連載中(2021.5現在)なのでそこまで言うトップスピードマシンとはどんな乗り心地かね、という人には一冊ものの『ラクダ使いと王子の夜』の方がいいかもしれません。
ラクダ使いと王子の夜』は表題作でこの作品はほんわかしているのですが、収録作品が3作あり男子高校生の恋愛と近親相姦2作
高校生はともかく、残りの近親相姦が兄弟の弟攻めと父息子の父攻め。
兄弟の方も重いですが、父息子は性的いじめや異存や暴力もありです。
表題作とのギャップ…。

今回紹介した作品は学生同士の恋愛が読みたい時にお勧めです。

新装版はカバーと10ページ漫画の描き下ろしあり。